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サイタマ


俺が保育所の頃見ていた戦隊ヒーローアニメは、自律して動くロボット達がチームとなって、地球侵略を狙う怪人達と戦って勝つという完全な勧善懲悪モノだった。
ストーリーとしてはよく言えば王道、悪く言えば単純。今でこそ「ありきたり」だと評価されてしまう内容だが、当時は世代問わず多くの視聴者に恵まれていた。
勿論俺もそのロボットヒーロー達に大ハマり。大好きだった。
その中でも一番はチームのリーダー的存在だったロボットだ。誕生日にも、クリスマスにも、プレゼントをねだれた時にはいつもリーダーロボの玩具を買って貰っていた。
そのアニメでは当時の俺と同い年の少年がロボットたちの友人としてメイン出演をしていた。
少年がピンチになれば何処へだろうとロボたちは駆けつけていたし、少年の掛け声や応援で新たな強さを会得し、見た目も力もパワーアップして行くロボットたちは純粋にカッコ良く見えた。大人たちの思惑のまま、新しく発売されるニュースタイル玩具も買って貰ったっけ。



それからすっかりロボット好きをこじらせてしまった俺、ナマエ少年はロボットオタクへと華麗なる転身を果たしたわけである。
小学生くらいならまだ「ただの好き」だと名乗れたけど、中学になってからの「好き」は「オタク」だと周りから思われやすい。
昔はクラスメートたちと一緒に"今日のロボットヒーローたち"についての話題に華咲かせたものだが、中学になって妙に大人ぶりカッコつけになってしまった皆とはそう言った話が出来なくなってしまい、つまらない。

数ヶ月前までは「今日の給食の余ったプリン俺のな!」と言っていた奴が可愛い子に向かって手当たり次第に「俺とケーバン交換しねぇ!?」と迫っていたりする。
「ぼく体育と国語の授業だいすき!」と言っていた奴は「授業まじかったりぃ」と言うようになった。


もう誰も、俺と「ヒーローについて」語り合ってくれなくなった。

周りに置いてかれてるな、とは思う。これでも多感な年頃だ、それぐらい勘付ける。
だけど。だからと言って、俺は大好きなロボットヒーローたちのことを忘れるぐらいなら、俺は変わらないまま、ずっと俺のままでいようと思う。
俺が変わらなければ、俺の好きなロボットヒーローたちも変わらないでいてくれるはず。
ずっと好きでい続ければ、俺もあの少年と同じ立場で……「ヒーローに憧れる少年」でい続けられるような気がするのだ。










「……話なげーよ。20文字以内でまとめてから来い」
「なんだと。隣の席のよしみじゃないか、ちゃんと聞けよ」
「その"ゴディバチョコダー"が"ダイコンナス"に負けてからどうなったんだよ。説明下手すぎて話が全然把握できねーんだよ」
「ゴルディオンガーとダイアコーンな!だからそこでゴルディオンガーは敗北を味わったことで打ちひしがれる他の仲間たちを焚き付ける為にリーダーのゴルドは一人でかつての師匠だったアルバドネスの元で辛い修行とボディメンテナンスを受けたことにより新たな必殺技ネオ・グレートゴルディオンソードを会得し…」
「また新しい単語出てきた……」



つまらない中学三年間を過ごしそうだなと思っていたんだ。
でも幸運なことに、一回目の席替えで隣の席になった「サイタマ」と仲良くなれた。こいつも何かとクラスで浮いている奴で、大抵一人でいることを俺は知っている。何故なら俺もずっとぼっちでいたからだ。

俺の話すロボットヒーローの話を サイタマは「つまんねーつまんねー」と言いながらも何だかんだ聞いてくれて「それで最終的にゴルディオンガーはどうなんだよ」と会話の続きを促してくれる。なかなか聞き上手だなお前も!俺も話し甲斐があるってものだ


「……ナマエは大体ロボットのこと『カッコイイ』って言うんだな」
「?『強い!』『やばい!』も言うぞ?」
「いやそう言うんじゃなくってさ…感想が単純だなって。」


 あー悪い意味とかじゃなく、なんか "小学生みたいな"感じ?


「………サイタマぁあ!!」
「うわっ!怒んなって」
「怒ってねぇよ!」
「あ?怒ってねぇの?」
「喜んでんだよ!!」
「あ、そうなんか」
「俺は『子どもっぽい』って言われるのが最高の褒め言葉に感じるんだ!」
「…変わってんなーお前…」