昨日の晩は上手くスリープ機能が作動してくれなかった。 それ程にプロールの脳内はナマエへ告げるプロポーズのフレーズだけで埋め尽くされていた。 ――バンブルビーには笑われた。≪本気?≫ 無論本気である。冗談ではない ――アイアンハイドには励まされた。≪駄目元って奴だよね!僕知ってるよ≫ 誰が駄目であるか。それはやってみないと分からないではないか ――ラチェットとオプティマスはこの事を知らない。プロールがナマエにプロポーズすることを。あの二人にはとてもじゃないが伝えたくはなかったし、知ってほしくもなかった ――サリには怒られた。「わたしのナマエおねえちゃんを独り占めする気でしょ」 そう、なれば良いなと思っているだけで、それはまだ希望的観測の範囲を脱してはいない ナマエに結婚を迫る上で、プロールは色々と思考を巡らせていた。 仮にオプティマスがセイバートロンに戻り、オートボットのリーダーとして活躍しようと考え地球を離れようと考えているのなら、プロールもそれに従おうかと思った。地球での暮らしは、ディセプティコンを追う上での仮住まいに過ぎず、出来ることなら宇宙にある自分達の星に帰りたいと。 だが、その決心を全てナマエと言う女の子が取っ払ってしまったのだ。 叶うことならあの子の傍にいたいと、このスパークはそう願ってしまったから ・ ・ ≪ナマエ! 結婚しよう!!≫ 口火はいとも簡単に切ることが出来た。 音声回路も震えを見せず張り上げる。目の前に立つ小さなナマエは大きな目をもっと大きくし、 「 あら、まぁ〜 」 一言だけ、そう呟いた。 ≪(……あ、あら まぁ…!?)≫ ナマエ それはどう言う意図で言った言葉なのかが私には理解できないよ。 しかしまだ、拒絶をされたわけではない。 落ち着いてその真意を訊き返す。 ナマエは、驚いてくれたようだった。 「………」 ≪…≫ プロールにとっては耐え難い沈黙が降りる。しかし黙っていなければならない。ナマエが思案しているからだ。それはおそらく、プロールの言った「結婚しよう」の発言に関する返事の内容だろう。一分一秒がこれほど長く感じたことはない。ほぼ永遠を生きるトランスフォーマーにとって時間への頓着は薄い。だが今だけはまるで時の流れを、時空の万人や始まりの神が変えてしまったようだ。 ああ、オールスパークよ!なぜこんなひどいことを! 「結婚したら、プロールさんとずっと一緒にいられるんですよね〜?」 ≪ ――はぇっ!? え、あ、 そ、そう、その筈である≫ 飛んでいたプロールの思考を引き戻したナマエは打って変わっていつもの笑顔 「それって、すっごく素敵なことですね〜」 それはプロールを現実に引き戻し、心地を与える笑顔だ 「私でよければ〜お願いしますプロールさん〜」 ≪……んはぁ!!≫ それから後の自身のことを、プロールは記録できていなかった。 ただどうしようもなく嬉しくて、スパークが震えた、そんな感覚と、ナマエが傍に残っていたばかりである |