こう 手っ取り早く、それでいて合理的かつなだれ込むようにナマエの嫁になるにはどうすれば良いか。おれはそればかり考えて日々を過ごしていると言えばナマエはどれほどのレベルで怒るだろうか。ナマエは昔から怒りっぽい奴だった。おれが何かをしても怒るし、おれが何もせずにいると更に怒る。七武海と言う立場でなくなり、ただの一般人として生まれたおれに対してのナマエの風当たりは人生を繰り返すごとに強くなって行っているような気がする。やれ「真面目に働け」だの、「もっと真面目なことを考えるようにしろ」と言う。そこでおれが言いたいのは前述の通り、「如何にしてナマエの庇護下かつ愛情を受けられる立場にいられるかどうか」だ。ナマエの傍にいれば自分が生きていけると言うことは実感済みである。逆に言うとナマエがいなければおれは生きていけないということ。 文面にしてみるととても由々しき事態のような気がするが、どうもおれはナマエ曰く危機感がない。 今日だってナマエに言われるがままに――半ば騙されたようなものだが――大型ショッピングデパートへと赴き、成人式以来に着たようなスーツを着て面接とやらを受けているが、考えてる事と言えば「ナマエが頼んできたから仕方なく」である。面接官だとか言う妙齢の女が何かを言っているようだが、理解するには難しすぎる言葉ばかりを使うのでちっとも頭に入って来ない。元来、おれは考えるよりも行動する派なのだ。――それをナマエの前で言うと豪腕が飛んで来るだろう―― 「え、えぇと…わが社の他にも多数の会社があると思うのですが、何故当社を選択されたのでしょう」 「……ナマエが選んだのだ」 「――は? それはつまり、ご友人かご家族からの推薦と言うことでしょうか」 (………友人…) 友人と言う軽い関係ではないのだが……そう思考している間にも、面接官からの質問は飛んでいた。「学歴」「自己PR」「志望理由」「資格の有無」など耳に入れたくもないような言葉ばかりで頭痛がする。もう本能的に拒否反応が出ていたらしく、おれは深く考えないままに「…少々静かにしてくれ」と面接官に言っていた。後になってそれをナマエに伝えると罵声と共に拳骨を貰ったが、その時 面接官の女は赤ら顔で呆けていただけだった。気分を害したりはしていないから、許してくれ。 ・ ・ 「その展開からどうやって『採用!』になったのか全く分かんねぇんだがな!!」 「自己PRしろと言われたから腕っ節と剣の扱いには自信があると言えば「強い男って素敵」と言われた」 「女性ってほんとなに考えてんの… こんな駄目人間なミホークのどこを見てボーっとしてしまう要素があるんだ…?」 顎に手を当てて本気で考えているナマエの顔をじーっと見つめていられる時間が出来た。 勝手に面接に応募されたことを少しは怒ろうかとも思ったが、 おれを想っての行動だったと思うととても気分が良い。 「…まあとにかくよ、ちゃんと仕事ゲット出来たんだから頑張って働くんだぞミホーク」 「………ナマエが勝手に応募したくせに…」 「ぐ…い、いや言い訳みたいだけどまさか本当にお前が受かるなんて思ってなかったんだよ」 散々な言われようだ。一応頑張ってきたのだから、何か褒美が欲しい。 そう言えば、ナマエは「まだ働いてもいねーくせに」と言って顔を顰めたあと、「……何をご所望なんだよ」 「ナマエと一緒に住めたら、頑張る」 と言うよりそれ以外は必要ない。ナマエがいて、おれの面倒を看てくれるのならそれだけでおれの人生は充分だ。 「…お前なぁ」表情や口ぶりとは裏腹に、駄目だとは言われない。「不束者だが面倒を看てくれ」頭を下げてみる。すぐに脳天に拳骨が来た。 「ふざけんな 不束じゃない者になってから出直せ。……そしたら嫁にでもペットにでも迎えてやっから」 「!」 言質だ 絶対に忘れんからなその言葉 |