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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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十代とデュエル


十代とデュエルするのは、何故か、とても楽しいことなんだ。

「へへっ、また俺の勝ちだな!」

俺にだって一応デュエリストのプライドがある。
一対一でのデュエルで負けたとなれば、大なり小なり悔しい思いをする。タッグデュエルの場合はその限りではないけど、完璧に打ち負かされたり、あと一歩のところで手が届かなかったりすると、ああ… と言う落胆と一緒に強い無念が襲う。
でもそれは、どうしてか十代とデュエルした時は全く生まれない気持ちになる。
今みたいに、彼の操るHEROカードと十代自身の類稀なドロー力でコテンパンにやっつけられた後も、「凄いな十代は」と清清しいくらいの笑顔で笑えてしまうのだ。
それはひとえに十代自身の人柄や言動が影響しているのかと思ったけど、人柄を理由に挙げるのなら翔や剣山との時だって苛立ちは湧かない筈だ。
負けた後の自分を気遣ってくれる人なら生徒の中にも何人もいる。
けどその他の人間と十代とでは、やはりどうしても違ってしまう。


「でも小波も強かったぜ!あそこで伏せカードを破壊出来てなかったら俺が負けてたかもな!」

なんてありもしないことを平然と言ってのける十代は凄い。
あの場面であのカードが発動できなかったから?
あのターンで伏せカードを破壊されたから?
あの展開でモンスターを召喚できなかったから?

いや、それはないだろう。俺の些細なミス一つが十代の足をすくったはずがない。
それくらい、十代の実力は本物なんだ。


「…十代って、凄いよなぁ」
「 えー、なんだよ小波!いきなり褒められると照れるぜ!」


なぁ お前は絶対知らないだろうけど、一応十代のデッキとかプレイングの研究もしてるんだぜ俺
十代が俺をタッグパートナーに選んでくれてから一緒に他のデュエリストのデッキ構築や研究、それに関しての調整なんかをしてる影でそれを行っていた。自分のデッキの編集を俺にも任せてくれるようになってからはそれも余計に考えてやってたんだ。タッグの時に使うデッキと、一対一で戦う時のデッキは別々だけど、どこかしらでも良いから十代の強さに関するヒントや何かを見つけられはしないかなって期待して、

けどやっぱ、そんなのは全部ムダなことなんだよな。



「……すごい 十代はすごいって」
「お、おい小波 ホメコトバはそれくらいに…」

「カッコいいよ、十代は」



十代が小さく ひゅっ、と息を吸う音がしたけど、俺にはその時十代が何を思ったのかは分からない。
俺の思考回路はこの時すでに、いかにしてこの十代の強さを自分の力で盛り立てられるか、へと移っていたから。