YGO夢 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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連れて行かれそうな小波君


久しぶりに泊まった街の宿屋のベッドは少し硬くて寝苦しかった。普段なら一度布団に入ればそのまま朝まで熟睡、小波に起こしてもらうまで目覚めないことに定評のある俺だったけど、今日は眠りが浅いまま、僅かな物音を感じて目覚めてしまった。

隣のベッドで眠っていた筈の小波がいない。

便所にでも行ったのか?別に追いかけるまでのことはない。あいつがいなければ眠れないわけじゃないが、いないとどうにも安心して寝付けないのも確かだ。
ベッドサイドに凭れ、小波が帰って来るのを待っていよう。きっとあいつは驚く。「十代起きてたのか?」そう言う小波こそ、万年寝太郎だったお前も俺と旅をするようになってからバランスのいい睡眠時間を覚えたよな。うん軽口はこういう感じでいいな。よし早く戻って来い。


そう思った時、窓の外から大きな音が鳴り響いた。ドン、と宿全体を震わせるような爆音だ。

「なんだ!?」
『十代。外に小波の気配を感じるよ』
「小波が!?」
『でも様子がおかしいみたいだ。気配が疎らに感じてゆくみたいな…』

ユベルの言葉に最後まで耳を傾けているよりも早く俺は窓から外へと飛び出していた。取っていた部屋は二階だったが難なく飛び降りて音のした方へと駆け走る。この音の出処の近くに小波がいるのであれば事は大問題だぞ!


「小波!! こ、な…」


音の中心……いや、青白い光の中心と言い換える。その中央に小波は立っていた。手足をぼんやり発光させながら。


「おい小波!」
「……ぁ……十代…」
「ったく、夜中抜け出して何やってるんだよお前。消えかかってるぞ?」
「うん気付いてる。多分、呼ばれてるんだ」
「誰がどこからどこに小波を呼びつけようとしてるんだ?俺の小波を許可無しに持ってく奴なんか許せねぇ」
「誰が誰の俺だ……まあともかく、どうしよう十代」
「どうって、何が」
「行ってもいい?」
「ダメ」
「だよなぁ。でもここまで足消えちゃったし…」
「どうしても連れてかれそうになってんなら俺も一緒に行くぜ?」
「えっ、十代も?」
「いつかのパラドックスの時みたいなやつじゃないのか?」
「うーーーん……?似たようなかん、じ?」
「なら問題ないな。小波を一人にすると誰に攫われちまうか分からないからな」


「……ばか言え」


そう言っても、差し出された手を拒むことはなかった。
この手は、自分と共にあるべきものだと信じて疑わない