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遊星(TF5)




自宅のテレビが映らなくなってしまった。
元々、行きずりでタッグデュエルを組んだ相手から「君のお陰で大会に優勝することが出来たよ!」のお礼としてもらった小型テレビで、大事にしていたのだけど昨日とうとう映らなくなった。黒い画面には困っている俺の姿が映っているだけ。別に無くても困るわけではない。一日の大半を寝ているか、外に出てデュエルの相手を探したりタッグパートナーの用事を手伝ったりしているせいでテレビに面と向かう時間は、おそらく30分にも満たないと思う。だけど、このまま放置するのも、棄ててしまうのも忍びない。
思い立った俺はPDAで時間を確認する。夜の1時半 友人の家を訪問するのに非常識な時間ではあるが、きっと彼ならまだ起きているだろうし、頼りになってくれるはず。
『用事があるんだけど今から行ってもいいかな』とメールを送った。ものの数分で『構わない』だけの返信がくる。やっぱり起きてた。







「…用事と言うのはコレの修理のことか」
「そう。ごめんな、Dホイールの点検してたのに邪魔して」
「いや、大丈夫だ。何かあったのかと心配してただけだ」


あれから。余計な傷を負わせないように細心の注意を払いながら小型テレビをポッポタイムまで運ぶのに要した時間がちょうど30分。と言うことで現時刻は夜の2時。普段の俺なら就寝してる時間にも、遊星は夕方見た時と同じ様子で起きていたらしい。その生活リズムの悪さを叱ろうとも思ったけど、今日は止めておこう。こっちが物を頼みに来てるのに、それこそ非常識だ。


「……」
「…直りそう?」
「ああ、この程度なら問題ないと思う。必要なモノなら揃ってある、今日の朝までには直せるはずだ」
「本当に!?さっすが遊星!」
「い、いや…」


うーん、このイケメンメカニックめ!頼りになるっぷりがパラメータ振り切ってるよ!

愛用の工具を使って次々にテレビを分解して内部を調べている遊星の背中が大きく見えていると、何かに気付いたらしい遊星が手を止めて背後にいた俺を振り返る。


「小波 修理が終わったらお前の部屋に届けるから、今日はもう帰って寝た方がいいんじゃないのか?」

眠いんだろう?


…遊星が指摘したことは当たっていた。確かに今の俺の状態は、「すこぶる眠い」
でもここで俺だけ家に帰って自宅のベッドでぬくぬく惰眠を貪るってのも、睡眠時間とDホイール点検の時間を割いてくれている遊星に申し訳ないのだ。こんなことを言えば遊星は「俺のことは気にしなくていい」って言うに決まっている。だから俺はうーうん、と首を振った。


「お邪魔でなければ、待ってるよここで。あ、ソファは借りるかもだけどな」
「…いや、邪魔ではない。そこにいてもらっても俺は大丈夫だ。…でも、いいのか?」
「うん平気。遊星の背中見てるのも結構楽しいぜ?」
「…そ、うか」


――なんて言ったはいいんだけど、
その後俺は、多分15分ぐらいは粘ってたんだけどいつの間にかソファのところで寝入ってしまったらしい。

帽子の間を縫って朝の光が目に入って来て、それから飛び起きた俺の体の上には遊星がいつも着ているジャケットがかけられてて、恐らく投げ出していたであろう手足も整えてくれたのか全てソファの上に乗せられていた。このザマである。

迷惑をかけてしまった遊星の姿はガレージにはない。そこで丁度足元で何かがコツンと当たった。元の形に戻っていた小型テレビだ。きっちり直してくれたんだろう。色々と、お礼を言わなければならない。


「遊星どこ行ったんだ!」
「? 小波?」
「あっ遊星!」
「すまない、水を取りに行っていた。飲むか?」


この期に及んでまだ俺の世話を焼いてくれようとしたらしい。
渡してくれようとするコップを前に、俺はどんな顔をすればいいのやら。


「あー…その…、色々ありがとな遊星。テレビとか、あとジャケット…あ、あと寝苦しくない体勢にしてもらって…」
「気にするな。それは俺がやったことだ」
「うーハンサム過ぎて辛いぞ遊星ー。なんかお礼したいんだけど…」
「…いや、お礼ならもう…」
「…へ? もう?」
「な、なんでもない」


俺のになる筈だったコップの水を大慌てで飲み干した遊星は飲み終わった後、あからさまに「しまった!」って顔になった。そんな顔しなくても、その水は遊星が汲んだものなんだから気にする事ないのに。
本当に遊星って、いい奴だよなぁ。