TF男主長編 | ナノ
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ディセプティコンの連中は全滅した。人間とオートボット達の力によって
最後はオプティマスを結果的に助けることになったメガトロンの姿も、
今となってはただの鉄塊だ。オプティマスの腕も無残にももげてはしまったが、
≪これぐらいなら大丈夫だ。すぐにくっつく≫とラチェットが言っていたから安心だろう


戦いが終わって、軍から渡されていた武器や火器を返そうとレノックスを探す
中々老体にはキツイ戦いだった。まあ自分が生き残れたのは相棒であったディーノのおかげであるのだが
ディーノはナマエの命令に皆が驚くほど順応に動き、ナマエの戦いやすいように、勿論自分も動きやすいように終始動いた
NESTの隊員達もオートボットの戦士達も、ディーノの変わり映えようには驚くどころか本人であるかを疑っていた



「…ああレノックス!」

「ナマエさん!ありがとうございました、お疲れ様です」

「はは、労いの言葉が此処まで身に沁みる戦いもなかったね。貸して貰っていた武器は全てお返しするよ。まあ、弾はもう無いがね」

「お預かり致します。それと…ディーノのことなのですが…」

「………ああ」



ディーノは今、仲間達と共に労い合っていた。破損した部分を指摘しては、笑いだねにしたり、アイアンハイドの死を悼んだり、オプティマスの怪我の具合を示唆したり、


そのオートボット一味の中にいるディーノを呼び出す


「…ディーノ!少し来てくれないか」

≪あ?何だよナマエ、レノックス 功労賞として褒美でもくれるのか?≫

「それはまた今度だな」

「君もお疲れ様、ディーノ」

≪お、おう…だから早く帰ろうぜナマエ 今日は車庫でゆっくり眠りたいねぇ≫



ディーノは腕のカッターを鳴らしながら、さも疲れたぜ、と言うように排気を零した
レノックスとナマエの顔が少し歪んだのが見えた



≪…あ?何だよ二人して≫

「ディーノ、実はそのことなんだが…」

「お前の修行期間は終了だディーノ」

≪……は?≫



ナマエは横を向いて、ポケットからキャメルを取り出そうとした。しかしディーノがいたのを思い出してその手を留めた。しかし顔には明らかに不機嫌そうな、哀しそうな表情が刻まれている



「ナマエさんの所にお前を修行に行かせる期間が終了したんだ。今回の戦いで、お前は随分と成長したよ。人間も護ったし、地球も護った。ナマエさんのところで、よく頑張ったなディーノ」

≪……つまり、俺に、基地に戻れってか?≫

「まあ今までもちょくちょく戻っては来ていたが、これからは前のようにずっと基地に居るという感じに…≪おっ、おいナマエ!!≫」

「……なんだい?」



ディーノが焦ってナマエに詰め寄る。
大きな身体に詰め寄られても、ナマエは平然としていた。その顔は、今は無表情だった
ディーノが一年間で見たこともないような顔だった



≪お、お前はそれで良いのか!?≫

「…それで良いとは?」

≪だ…だから俺様が基地に帰っても…≫

「元から一年ちょっとの間という約束だったんでねディーノ 別れは辛いが、死ぬわけじゃないし、君は仲間と一緒に居れるからもう少し喜べば…」

≪こ、断る!!≫

「「は?」」



ディーノの発声ボリュームを最大限にしたような音で叫ばれる。
近くにいた人間達やオートボット達もなんだなんだ?と此方へと興味が移ってしまったようだ



≪お、お、俺は…お、おま、おま、お前と…≫

「…?」



サムと共に近くに寄っていたバンブルビーがラジオから≪"頑張れ先輩!"≫と何処かのアニメのような女の子の声で声援を送っている。オプティマスも片腕で肩を押さえながら、レッカーズもなんだぁ?と言った視線を送り、話の真ん中にいたレノックスも後ろにいたエップスのところにまで下がっている。
つまりディーノとナマエを真ん中にしてグルリと関係者達が二人を取り囲んでいた。
まだ冷静なナマエはこの大衆の目に晒されている光景に気付いていたが、どうやらディーノは気付いていないようだ。その顔が一心にナマエを見つめているからか



≪っ…ナマエ、ナマエと……これ、これから、も、い、…一緒に…≫

「……ディーノ」



ナマエも子供ではない。ディーノが何を言おうとしているのかは何となく察しがついていたが、言わせたい、言って貰いたい、と言う気持ちがあって内心ニヤニヤしながらディーノの言葉を待っていた。自分の第二の愛車が、とてつもなく可愛い瞬間じゃないか



≪…い、一緒にいろやボケェ!!



最後の最後で堪えきれなくなったディーノの言葉遣いが荒くなったことなんか
気にならないぐらい可愛い、とナマエは思った
周りの皆からはウオー!!やエー!?だの叫び声でお囃子や驚愕が聞こえてくる


ナマエはニヤッと笑って、ディーノに近付く。強張ったディーノの身体に手を伸ばすと、彼にしてはありえないぐらいフニャっとした顔で見つめてきた。可愛い、なんてかわいいんだ私のフェラーリは



「…一日一本、煙草を吸うのを許してくれるなら、構わないよ?」


≪…っ、ゆ、許す!許す!!≫



ディーノはそこで初めて自分が大勢の仲間達に囲まれているのに気付いたのか、
ナマエにそう返事した瞬間周りを見渡し、≪何見てんだテメー等ぁあぁあ!≫と怒鳴った
仲間達は楽しそうにしていたので、ディーノは解ってねぇ!と憤慨していたが


ナマエはレノックスに近寄り、顔を合わせる



「…と、言うわけなんだが」

「もう軍には一部始終の光景が行ってますよ」

「おや、それは困ったな。可愛いディーノの姿が上にまで筒抜けかい?」

「まあ、貴方のものだと全員に認識されたのですから良いのでは?」

「それもそうだな」



ナマエの家の車庫には、今まで以上に輝く真っ赤なフェラーリの姿があった