≪アンタが日本人とやらのナマエか≫
「…サイドスワイプ?」
存在だけは知っていたオートボットのサイドスワイプが俺に話しかけてきた。NESTに所属をしてはいるが、オートボット達と触れ合うことは少ない。任務で一緒になったことは1回だけあったが、それだけの浅い縁だった
間近で見ると、やはり凄い。どうなってんだこいつらの構造
≪英語で良いのか≫
「ああ気にするな。日本人とか言われてるけど、一応ハーフなんでね」
≪そうか。単刀直入だが、今日付けで俺とアンタはパートナーを組むことになった≫
「……………俺と?お前が?」
≪そうだ≫
食べていたランチを置いて、同僚に断って席を立つ。そんな話は誰からも聞いていなかった、だから確認しに行こうと思っていた
≪…俺とは嫌か?≫
「は? ………ああ、そうじゃない。そんな話聞かされてなかったから、一応確認を取りにな」
≪確認を取るのは勝手だが、事実だ≫
「…なんでまた急に、」
そこが一番の疑問だった。サイドスワイプやツインズやアーシー達が最初に地球に来た頃にもすでにパートナーと言う名の地球のことを教える役目を請け負った人間たちが傍についているはず。アーシーやツインズたちは、まだそのパートナーが付いていたはずだ。無論サイドスワイプにも。しかし、何故サイドスワイプが今この時期になって突然に?
≪……俺が志願したんだ≫
「…どういう意味だ?」
≪ナマエ。アンタの剣技を見て決めたんだ≫
「……俺の剣技?」
父親が日本人で、母親がアメリカ人のハーフに生まれた俺は中学生まで日本で暮らしていた。祖父と父は有名な剣術家で、小さな頃から俺もそれを習っていた…いや寧ろ習わされていた、というのが正しい。何とか日本を離れ此方へ移ってくる前に免許皆伝とやらを習得出来、それを生かし、"ニッポンのニンジャ兵士"と言う妙な肩書きを背負って軍に入隊した。俺の愛刀、祖父が譲ってくれた名刀:村●で敵に立ち向かっていたのを前にたった1回だけ同行したことがある任務中に見たらしい、サイドスワイプが
≪俺は感銘を受けた。地球には、サイバトロニア剣術と凌駕し得る剣術があるのだと…!≫
「……あー…、あのなサイドスワイプ」
≪だから俺は申し出た!アンタとパートナーを組めるようにとな≫
「俺の剣技は別にお前とは張り合うものじゃ…」
≪ナマエ!!≫
「お、おう!?」
≪是非俺に、アンタのその剣術を盗ませてくれ!≫
「え、えー……」
機械だ、と侮っていたが、コイツ案外表情豊かに感情表現出来るんだな、と感心した。
今も期待に満ちたような、それでいて歓喜に溢れているような、そんな目で(どことなくキラキラ輝いている)俺を見てくる。器用に膝立ちになって
「……パートナーは、もう解消出来ないん、だよな?」
≪解消?させないぞ!≫
「……分かった、程ほどによろしくなサイドスワイプ」
≪やったぜ!じゃあ俺は早速アイアンハイドに報告してくるよ!ランチの邪魔して悪かったな!≫
「ああ…」
≪じゃあなナマエ!≫
「おう…」
サーッと、それはもう気持ち良いほどに颯爽とタイヤで滑走しながら走って行くサイドスワイプのルンルンそうな背中を見送る。ランチに戻る気もしない。俺はこれから、一体どうやってサイドスワイプに日本の剣技を教えなくてはいけないのか、
「………よし」
一先ず、村●を研ぎ直しておこう