出会いはお世辞にも良い印象、とは言えなかったが
二人は月日を追う事に少しずつお互いの印象を良い方向へと書き換えていた(主にディーノが)(ナマエは元からディーノに対して友好的だった)
ディーノと半同棲のような形になってから早10ヶ月
普段は我が家の車庫に住む彼との生活を同棲と呼んでいいものか悩むところだが
何度も愛想を尽かされそうになり、
もう出て行く!帰る!!いや待て行かないでくれ!と
犬も喰わないような、端から見たらただの痴話喧嘩を本人達は至って真面目に起こしながら、彼等はなんとかお互いの面子の為に日々を過ごしていた
今日は一ヶ月ぶりに定期報告として軍に電話を掛ける日だ
『…はい、此方NEST本部』
「あー…ナマエだ。すまないがレノックスに代わってくれないか」
『了解致しました』
……
『はい、ナマエさんですか?』
「そうだよレノックス」
『お久しぶりです ディーノの様子は如何ですか?』
「どうもこうも…一ヶ月前と一緒さ。仲良くしてるよ」
『それは良かった』
今ディーノは庭先に出て退屈そうに空とナマエを窓から交互に眺めていた
ナマエは電話の子機を手に持って窓際に近付き、同じようにディーノを見ながらレノックスと話をする
ディーノの目が、余計なことは言わなくていい と物語っている
前に比べたら、ディーノは怒り以外の感情をよく浮かべてくれるようになっていた。物凄い進歩だ
洗車をしてやれば、その気持ち良さに病みつきになったらしく事あるごとにそれを強請ってくるようになったし、
してやったらやったでその日一日は機嫌が良いのを保てる
それにたまにドライブに行こうと誘うと、嫌々な態度を取りながらも気分爽快そうに楽しんでいる様子が見える
逆にナマエが家でこっそり煙草を吸っていたら凄く機嫌を悪くする。煙草が死ぬほど嫌いらしい。吸ってしまった日には、半径3メートルに近付くことを拒まれる
だので最近は吸う回数を極端に減らした。その反動と言っては何だが、酒を飲むようになっていた。これもディーノは良い顔をしなかった。彼曰く≪酒臭ぇ≫とのこと。どうすればいい
ナマエは自分の生活がだんだんディーノ中心になりつつあることを半年前から予感していた
彼と生活するのも、中々に大変なことだ。それ以上に面白いことも多いのだが
『とりあえず、幸せそうで何よりですよ』
「ああ 幸せだよ。ね、ディーノ?」
≪…ご、50のオッサンが "ね?" とかキモイんだよ!≫
「……まあ、上手くやってるよ」
『そのようですね』
レノックスも嬉しそうだ。上に、『変わりなし。関係良好』と報告できるからだろう
しかし、最近嫌な噂を小耳に挟んだのだ
「……レノックス、最近 各国の色々な要人たちが次々と亡くなっているという噂を聞いたのだが」
『…やはりご存知でしたか ええ。奇妙な事件です』
交通事故、転落死、交通事故、交通事故、…その他色々な事故等によって、色々な人物が亡くなっていた。それは宇宙飛行士から始まり、スペースシャトルを設計した者、様々だがテーマは一貫している
「…怪しいな」
『ええ…今、独自に探りを入れているところのようです。何かわかり次第、貴方にもお伝えします』
「ああ…頼んだよ」
『ええ、それまでに ディーノをよろしく頼みますよ』
「任せてくれ給え」
そこで電話を切る。ディーノもナマエとレノックスの話を聞いていたらしく、その目は厳しくなっていた
「……ま、彼等に任せようか」
≪……テメェは狙われたりしねぇんだろうな≫
「おや、心配してくれるのかい?」
≪だっ!誰がテメェの心配なんざ……!≫
「大丈夫だよ。狙われているのは私より格の上の人間達ばかりだ。間違っても一介の軍人だった私が狙われる可能性は低いだろう」
≪そうかよ…≫
それでもまだ少し不安そうにしているディーノに笑みが零れる。本当に、彼は可愛くなった
「それに…もし狙われたとしても、ディーノが護ってくれるだろう?」
≪…………しょうがねえな!俺がお前の傍にいたら、護ってやらねぇこともねぇよ≫
「はは、頼りにしているよ」
私の頼もしいフェラーリさん?