話していて分かったこと。ディーノ君はイタリア訛りの英語を喋る
そして金属生命体だからなのか不躾に視線を寄越し、常にナマエを睨んでいる
気が短いらしく、時折腕のワイヤー付きらしいカッターをカチカチと弄んでいる
なるほど、これは確かに…
「……厄介だな」
≪何か言ったか≫
「いいや?」
とりあえず、私が落ち着くしかない。と、ナマエは胸ポケから本日二本目となるキャメルを取り出す。それに嫌な顔をしたのはディーノだった
≪……人間、煙草を吸うのか≫
「そうだが ……もしかして、嫌いかい?」
≪ああ 臭いが気に喰わねぇ。止めろ≫
「…………分かった」
一応客人が止めてくれ、と言ってるのだから素直に従うことにする。取り出した煙草を元のパックに戻した
そう言えば、確かに自分も愛車のフェラーリに乗っていたときは、シート等に臭いがつくのを厭い、車内では煙草を吸わなかったなと思い出す。
ナマエが懐かしさに目を細めていると、何を勘違いしたのかディーノはサッと目を逸らした。
≪………それで、俺はこれからどうすりゃ良い≫
「ん?ああ……」
そうだそうだ。確かそんな話をするんであった
「ディーノ君さえ良ければ、私はウチにいてくれても構わないがね」
≪…お前、正気か?≫
「何故だい?」
≪普通嫌がんだろ。俺みたいな扱い難くてきっつい奴がテメェの近くに居るんだぜ?俺がお前ならご免だね≫
自覚はあるらしいな。それだけでもまだ扱いやすい奴だ
「君の根性叩きなおせ、とは言われているが一朝一夕で治せることでもないだろう?だから一緒にいてくれたほうが、君もわざわざ基地から通わなくて済むし、私も君と仲良くできるかもしれないからね」
≪……はっ 俺が人間と仲良く?お前本気で言ってやがんのか?≫
「ああ」
≪!・・・・・フン≫
とりあえず分かったことがまた増えた。彼と話をするときは 正直に、真摯に話しかけること。そうすれば彼は案外簡単に籠城を崩してくれるらしい
≪…それじゃあ、人間 お前のお手並みでも拝見させて貰うとするぜ≫
「構わないよ。ただ…その"人間"と呼ぶのはやめてくれないか?私にも、ちゃんとした名前があるのでね」
≪………ナマエ これで良いのかよ?≫
「ああ、満足だ」
≪ふんっ!≫
そしてディーノはロボットモードからビークルモードへと姿を変えた。この姿の方が楽チンだから変形したらしいのだが、ナマエはと言うと
「………!」
感動していた
やはり間近で見る赤のフェラーリの格好良さと言ったら語りつくせないほどに素晴らしい。ディーノがどんな経緯でフェラーリをスキャンしたのかは解らないが、とても素晴らしい審美眼だと思う
ナマエは興奮のあまり、ディーノの車体に手を触れた。ディーノは面白いぐらいにビクついた。そして怒鳴ろうとして、 止めた
ナマエがあまりにも恍惚とした顔で自分を見てくるからだ。少しだけ恐ろしかったから、とも言う
≪お、おい…ナマエ!≫
「本当にフェラーリは素晴らしい…!この艶かしいボディライン、誘惑するような、蟲惑的な赤…素晴らしい…ディーノ、君はとても素晴らしいよ…!」
≪テ、メッ…!離れやがれクソ!!≫
ディーノはこの時を思い出すと、今でも少し泣きそうになった
そしてこの人間への考えを改めた。矮小で弱小な人間と言うレッテルは一先ず貼らず、『変態野郎』に書き換えた