≪ナマエは小せぇな≫
「……ジャズたちから見たら、そうだろうな」
≪でもそんなところも好きだぜ!≫
「………はぁ」
笑って武器の手入れをするナマエの背中をつつく。
戦いも終わって、NEST基地解体の話が持ち上がっているらしく、兵士達は名残惜しみながらも基地の後片付けをしている。
今後は、俺達オートボット達の居住スペースを設営し、NEST隊員だった兵士達は元の空軍、陸軍の部隊に戻るらしい。
戦争の終わりは、祭りの後に似ている、とナマエが言っていた言葉を思い出す。
「お前もよく飽きねぇな 俺みたいなんの何処がいいんだか」
≪飽きるとか、そういう問題じゃねぇんだけど≫
ナマエと出会った先々の戦いを思い出す。
一度、メガトロンに機体を真っ二つに引き千切られた時は死を確信した。
しかしオールスパークの奇跡が起きて、
無事に意識は取り戻したのだがラチェットに、
≪お前のパーツが足りないぞ。引き千切られた時に、何処かへ飛んで行ったんだな。治りは遅くなるぞ≫≪はー?すぐに戦いに参加してぇのにどうにかなんねぇの…≫「すまない」≪…は?≫「戦場から何となく拾って来たんだが…これ、アンタの一部か?」≪……俺のパーツ!≫「良かった。アンタのか 拾った甲斐があった」
・・・・・・・
≪……あの時から俺のスパークはナマエに一直線だぜ!!≫
「お前のパーツ拾ってきてやっただけだろ」
≪俺にはあれだけで充分だったんだよ≫
まだ運ばれていないコンテナに腰掛け、腕組みしてナマエの背中を見つめる。
人間の背中は、得てして小さいが、ナマエの背中だけは途轍もなく広く大きいものに見える。
そうだ、あれだけで俺には充分だった
生死の境を彷徨った俺に、決定的に生への手を差し伸べてくれたのはオールスパークなんかじゃなくてナマエだった
俺は忘れない。ナマエが 大きな俺の銀色のパーツを抱えて目の前に現れたあの瞬間を
今もメモリーに焼き付いて離れない
メガトロンに裂かれた身体は痛みに苦悶したが、それだけではない出会いも引き連れてくれたのだ
幾らアプローチしたって振り向いてくれやしないナマエ
それでもいいと思った。そして、こんな時に、身体が他より小さくて良かったと思う
≪………ナマエー!≫
「どぅおわぁ!? ジャズおま、いくら身体小さいからって飛び掛ってくるなよ!潰す気か!」
≪これぐらいで潰れるんだったら、ナマエはとっくに俺の愛で潰死してるとこだぜ!≫
「うるさい!」
武器の点検を終了し、手榴弾や銃火器を運ぼうと立ち上がるナマエに連れ立って俺も立つ。
ナマエから重いランチャーや手榴弾や埋め込み式爆弾が入った箱を受け取り脇に抱える。ナマエもバレットや小さな銃の入った箱を手に持った
今から輸送機にまで運びに行くのだ
「…お前らの居住スペース、どうなるんだろうな」
≪さあな ってか本当に作られんのか?≫
「分からん… お前らが大人しくさえしてたら人間世界でも暮らせると思うんだけどな」
≪じゃあ大人しくしてるからさ、ナマエん家に住ませてくれよ≫
駄目元で訊いてみただけだったが、予想外にナマエは笑顔を返してくれた
「…俺の自家用車にもなってくれるんだったら別に良いぜ?」
≪―っ!?マ、マジかよ!≫
「嫌か?」
≪ぜんぜん!喜んでお前の足になってやるぜ≫
「ありがとうなジャズ。一人暮らしで淋しかったところなんだ お前が来てくれたら楽しそうだな」
そう言って笑ったナマエに、スパークと、ナマエが持って来てくれた身体のパーツの一部が熱を持った
「ジャズ?どうした」
≪……〜っ、ナマエ!いつか俺を襲ってくれ!!≫
「・・・・・・・・・・・考えておいてやるよ」
お互いに無理が生じないことが分かったらな、と茶化し笑うナマエに、
俺のスパークはもうオーバーヒート寸前だった