TF男主長編 | ナノ
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
心配する 心臓




俺の人生において幾度か述べたと記憶しているが、奇跡と言うものは存外起こりやすい。

欺瞞の民だとか、破壊大帝だとか、悪の首謀者とか、
聞くだけでも係わり合いになりたくない、と思う奴らに俺は身の先までどっぷりと付き纏われている。
誤解がないように言えば、それは決して嫌なものではない


そして俺の人生で何度目かの奇跡が起きた。

いや、ここまで来るともしかしたらこの出来事は奇跡ではないのかもしれない。

オートボットの司令官、オプティマスプライムと話をする機会を得られたのだ。

ディセプティコンとは交流を持ちながら、
オートボットの者とは持たなかったのも、今思えば違和感のある話だったが



オプティマスが声をかけてきたと言ってもそれは何でもない、
メガトロンと交流を持つと言われている人間――俺の事を把握しておきたかったらしい。


オプティマスはメガトロンよりもどちらかと言えば華奢、とも思われる姿をしていたが、その物腰は驚くほど優しい。

メガトロンの拙い優しさ(と俺は勝手に認識している)に慣れてしまっていた俺としてもオプティマスがかけてくれる気遣いや思いやりと言うものは、久しく感じていなかったストレートな優しい感情だ。


だからつい話を長くしてしまいオプティマスを引き止めてしまった。自分に出来る限り、言い出せる限りの言葉と会話術を酷使して

とても楽しかったし、俺は浮かれていた。

臆病者で屑だと罵られ続けてきた己が、今この基地にいる人間の誰よりも、――まぁ長官や大佐やらとはまた別――特別な存在になっていることが、嬉しくてたまらない
包み隠さず言うならば、それはとても心地好い優越感だ


たかが会話――されど会話



しかしその"会話"と言う行動に、良く思わないのは何も同僚だけではなかったのだ











≪ナマエ、貴様が何処の誰と交流を持とうが、それは儂と関係の無い事だ≫

「…う、うい…」

≪だがな、儂はオプティマスとの交流は許可していないぞ下僕(虫けら)め≫

「なんだろう今虫けらって読んでなんて書いてあったか手に取るように分かる」



あ、メガトロンの取り巻く空気が重くなった。ちょっと思ってた事正直に口に出しすぎた。余計な事は喋らんでもいい!って言うメッセージを鋭いアイから察知しました



メガトロンの機嫌を頗る悪くさせてしまったのはレーザービークの告げ口が原因だ
告げ口した内容は俺とオプティマスが会話していたという前述のソレ
別に、人様に顔向け出来なくなるようなことをしたわけでもないし、レーザービークが事実を捻じ曲げてメガトロンに告げ口したわけでもないのに
どうも顔を背けてしまいたくなってしまうのはギラギラ睨み降ろしてくるこの大帝様のせいです。本当にごめんなさい



「メ、メガトロンが嫌ってるオプティマスさんと長話しちゃって本当にすみませんすみませんでしたごめんなさい謝りますからそう睨まないで下さいそろそろ泣きます」

≪五月蝿い虫けらめ。嫌ってる嫌ってないそう言う問題ではないわ≫

「………えー…………」

≪……………≫

「………すみません、お言葉の意味が理解出来ませんでした…」

≪莫迦極まりないな、愚か虫め≫



…あぁ…とうとう愚かな虫けら扱いだぜ…



≪レーザービークの寄越した内容が真実ならば、儂は貴様に1つ問わねばならん≫

「は、はぁ……」


常日頃から口先三寸(本当に舌が三叉だから困る)のレーザービークにここまで胡乱な思いを抱いたのは初めてだ



≪……やはり、貴様も"オプティマスのような者"を好むのか≫

「……うえあ?」



我ながら変な言葉が出た。ここまで意味を持たない「う」と「え」と「あ」の文字列はないだろう



「そ、それは一体全体どういう意味でしょうか…」

≪…儂の口からソレを言わせるのか愚か虫≫

「す、すみませーん!」



半泣きになりながら怖くなってメガトロンから視線を逸らすと、積み上げられたコンテナや機材の傍に、いつからそうしていたのか、隠れて様子を窺っていたであろうスタースクリーム、サウンドウェーブ、ショックウェーブのお三方の5つの目と満遍なく視線がかち合ってしまった


ゲッ見つかった!と騒いでいる3人の中で一番頼りになりそう(だと思っている)ショックウェーブにヘルプの視線を送る。が、華麗にスルーされた

が、それを見咎めたメガトロンに



≪貴様、話を聞いてるのか!!≫



とビリビリ揺れるような大声で怒られた



大きく手を動かしたり、意味の分からないジェスチャー(セイバートロン出身なら分かったりするんだろうか)をしてくるアイツ等三人の方はもう向けない。何を伝えたいのかも生憎分からない



そこまで考えて、思考に一旦余裕が持てたのか、何も考えられなかった俺の思考にある考えがポンッと浮かんだ
言ってしまえば、とても莫迦にされそうな、一蹴されてしまわないかと考えてしまうような
しかし言ってみるしかない、たとえ間違っていたって、これ以外の他の言い分が思いつかない



「……メガトロン、さん、」

≪何だ。さん付けするな気味の悪い≫




気迫にやられてしまいそうだがここで引き返したら背中をサックリ行かれてしまいそう



「エ、エー…い、今から言うことは俺の憶測でしかないのですが…」

≪…言ってみろ≫




「……俺は別に、言葉を交わしたからって、
オプティマスさんの方に心靡いた訳ではないので、そう言う意味では全く安心してくださ…」




俺のこの過信が当たっていたか外れていたのか、


それは真っ赤な顔で、俺の身体擦れ擦れに振り下ろされたメガトロンの拳が物語っていた