TF男主長編 | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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再構築された 心臓



仮にアレが奇跡だったとしよう。もしも奇跡だったならば、俺は二十数年の短い人生の中で奇跡と言うものを二度起こしたのだ。一回目は出会いだ。そして二回目は再会である







≪・・・・・・・≫

「…ひ、ひー!す、すみませんすみませんすみま」

≪ええい、喧しいぞ黙れ!そして何故出会って早々謝る!!≫

「わー!すみませーん!!」

≪・・・・・・≫



世界は広い。だからと言って基地内も広いわけではない。出会おうと思えば出会える空間だ。しかし何故か俺は"出会わない","二度目はない"と何故か漠然と安心していた。目の前に立つ威厳たっぷりの破壊大帝…メガトロンへの印象を確かに俺は"好"と認識してはいるが、それともう一度出会いたいかと言われたら答えはNOだ。なるべく恐ろしいものとは会いたくない。俺の人間の本能の部分が危険信号をフル稼働させていた。ただちにそこから退去せよ、と。そしてそれを脳がはじき出す。『成功率:女の子にメールで告白するより低い』イかれちまった!




≪……ナマエとか言ったな 貴様、ワシを舐めてるのではないだろうな?≫

「め、滅相もないっすよ!って言うか俺の名前覚えててくれたんですね、感無量です!はい!」

≪…貴様はスタースクリームよりめんどくさい愚か者だな≫




な、なんだと?あのスタースクリームより俺の方がめんどくさい!?俺>スタースクリーム?嘘だろ!俺の主観に寄ればどう考えてもアッチのがめんどくさいはずだ!



「大変遺憾だ!」

≪なんだと?≫

「しまった、声に出してた!」

≪・・・・・・≫



勘付いてはいたがメガトロンが俺を見る目が冷たい、と言うより何か虚しい

よく同僚に見られる目と同じ種類のものだ。ああとうとうメガトロン、トランスフォーマー達にまで俺は…



「……持ち場に帰ります」

≪…騒いでいたとおもったら突然消沈して忙しないヤツだな貴様は≫

「…よく言われます」

≪恐がり者か。よくぞまあそんな性格で軍人が勤まるものだ≫

「ま、まあ…もともと、『何か』を護るのが好きな性格でして…」

≪………ほう?≫




俺の話に興味を持たれたのかメガトロンが少しだけ体勢を俺の方に向けた。え、い、今の何処にそんな興味を惹かれるようなこと話したっけ?



 「おい、またナマエの奴がメガトロンと会話してんぞ」
 「恐がりでいっつもビクビクしてんのによくやるよ」
 「何でアイツって軍人やってんの?ビビリのチキン野郎のくせに」



う……な、何故このタイミングでいつもの同僚の陰口が聞こえてきたんだろう。良いことなんて何も言われない。分かってることだ。誰も俺の軍人やってる理由なんて知らないんだ。誰かに教えたこともないし。教えるつもりもさらさらな……

あ、あれ?なんだかメガトロンが同僚達の方を睨んでるぞ!?まさか興味がそっちへ移ったのか!?逃げろ同僚達よ 逃げるんだ!メガトロンの目が訳分かんないけど何か殺る気だ!指カチンカチンしてるし!


俺に注意を引き戻さねば!っていうか今は俺と話し中だったでしょうがメガトロン!



「あ、あの!アイツ等のことは殺さないでやってください!」

≪…何故貴様は奴等を庇う?陰でコソコソとしている奴等は気に食わん。言われているのは貴様だろうが≫

「…そ、それでも良いです。大切な仲間達です。俺がアイツ等に理解されないのは当然ですから」

≪…貴様がそれで満足している、と言うのなら ワシは貴様も気に食わん≫

「…っ!」




鋭い目が俺を睨む。確かに、メガトロンはそう言うの嫌いそうだな、と思った。だって俺も嫌いだ こんな自分



「………俺が護りたいのは、いつだって『自分』なんですよ、世界じゃない」

≪……それは誰もがそうだろう。己の保身が一番重要だ、生きる上でな≫



メガトロンに同意されたからと言って喜んではいられない。メガトロンの目は未だ厳しいままだ
俺はメガトロンに失望されただろうか。いや、特に期待をされていた覚えもないが。そうだ俺は誰にも期待なんてされていない、誰からも



「…メガトロン、俺も貴方のようになれれば、自分以外の何かを護れるようになるんでしょうか?」

≪知るものか。このワシも、大切な故郷である星を護ることは叶わなかったからな≫

「……そう、ですか」




あれ、俺は何で今 残念だと思ったんだ?


知らぬうちに、俺はメガトロンに憧れていたのか?
力にか?カリスマ性にか?統率力にか?




≪しかしワシは貴様が気に入ったぞ、ナマエ≫


「・・・・は?」



また幻聴が 疲れてんだな、俺




≪貴様、ワシの下僕になれ≫


「…下僕!?」



気に入った奴→下僕になる運命 なのか!?いや、それじゃあまさかさっきのは幻聴ではない!?疲れてないのか俺!



≪ワシが貴様を直々に指導してやろうではないか≫

「でっ!?」

≪喜べ。これは光栄なことぞ?ディセプティコン軍団を率い、統率したワシの指導力を身体に教え込んでやろうではないか≫

「でー!?」


一体何の話の流れでそんなことに!?って、まさかそしたら



「俺とスタースクリームは同じ穴の狢!?」

≪……貴様が気にするところは愚か者のことか≫

「!え、ちょ」



首根っこを掴まれ持ち上げられる。足が地面から離れて心許ない。
メガトロンは少し不機嫌そうになっていた。俺なんかしたっけ!?



「ご、ご機嫌麗しゅうしてくださいメガトロン…」

≪愚か者の話は止めろ。貴様とワシの間での問題だ≫

「は、はい!」

≪うむ≫



またいつかのように、俺は肩に乗せられる。いつかの時と同じ出っ張りに足をかけて腰を落ち着ける。今回は心も落ち着けた



≪さぁ行くぞナマエ ワシの下僕としての新たな始まりの一歩だ≫

「俺の人生どうなんだー!?」



踏み出したメガトロンの一歩は重く、基地内の床に亀裂を走らせた