このちっぽけな惑星から眺める宇宙も同じように小さく、くだらないもの、ただの塵の集合体、と言う概念
それが拭われた原因は簡単に見つかる。
「ブラックアウト」
コレほどまでに聴覚を刺激し、聞いていて心地好い音は聞いたことがない
奴が俺の個体名を口にすればそれは低い音階に変わり緩やかに聴覚ケーブルを伝わりスパークへと浸透する
「…おい、聞いているのかブラックアウト。俺の声を無視しようとすんなんてイイ度胸してるな」
≪……煩い。ちゃんと聴いているバカ者≫
人が星空を眺め余韻に浸っていたところを張本人が阻害してどうする。気分が台無しだ
しかしナマエの登場に因ってスパークは逸るばかり。困ったものだ
「…おまえー」
≪?≫
「俺と相棒になってからなんだか前までの初々しさが無くなったなー」
≪なっ…!だ、誰が初々しいなどと…!そんな時期なんてあるものか!≫
「あった!ぜってーあった!俺は覚えてんだからな!」
≪私は知らん!お前の記憶違いだろう!≫
「てめぇ、俺の、カスッカスだが相棒との大切な思い出はぜってーに忘れねぇ俺の記憶力舐めてんじゃねーぞ?」
≪…!≫
まだなおも言い募ろうと口を開くが、ナマエが「あーやめだやめだ!俺達星空の下で何言い争ってんだって」と言って手を振って背を向けたのを見て慌てて自分も振り返る。
その拍子に背中に収納されているプロペラが思い切りナマエに直撃した。
「いってぇ!!」
≪!≫
「〜っ…!」
≪す、すまん…!≫
「…あー、…うん、平気へいき。大丈夫だから、」
≪し、かし…!≫
今頭に当たったよな?人間は頭部へ衝撃が来たら死に瀕することもあると聞いたが、大丈夫なのか?本当に?
「あ、タンコブ出来てら」
≪…"タンコブ"?なんだそれは!新手の腫瘍か?病魔か?裂傷か!?≫
「マジ大丈夫だからな!だから、って、う、おぉお!? またかブラックアウト!」
ナマエの身体を掴んで引き寄せ、身体全体をスキャニングにかける。
確かに頭部に異常を見つけた。しかし怪我の程度が分からず、成す術がない
≪わ、私はどうすればいいんだ!?≫
「とりあえず降ろして俺を医務室に連れてけばいいと思うな俺!」
≪よ、よし!≫
「…ってちょっと待てこんなところでビークルになんな!移動距離は狭いだろ、…ってオイ!!」
≪静かにしていろ!傷にひびく≫
ナマエの制止の声にトランスフォームしそこなって身体が左右によろめく。その拍子に私の胸部で頭をぶつけたようでナマエがまた悲鳴を上げた。その声に焦って機体がビクついてしまう
≪………医務室が来い!!!≫
「どんな結論だそれ! って、うおおぉぉ…大声出すと頭いてぇ…」
≪だ、大丈夫なのか…?ナマエ…!≫
「…っな、んでそんな子犬みてーな顔してんだよ…!」
ナマエの顔が見る見る赤くなっている。体温も上がっているようだし、容態が悪化しているのは気のせいではない!
≪ナマエ、頼む死なないでくれ!≫
「死なねーよ!死なねーからブラックアウト、お前も落ち着け!」
≪し、しかし…!≫
「あーもう埒があかん!!」
≪キュー!!≫
「何でこのタイミングでスコルポノックまで出てきたんだよ!」