≪閣下がナマエに恋してて恐い≫
「……………スタースクリーム、黙ってリペアルームへ行くんだ」
≪俺は全く正常だ!!≫
リペア対象者のチェックリストにデカデカと『スタースクリーム』と書いたナマエの手からそれを奪い取りビリビリに破いて脇に捨てる。ナマエに怪訝かつ迷惑極まりない、と言う目で睨まれたがこんなところで怯んでいては己の保身に皹が入る、とスタースクリームは奮起した。此方に取っても死活問題なのだ
メガトロンにも他のディセプティコンにも、ましてやオートボット達に聞かれてしまってはたまらない、とスタースクリームはナマエの小さな身体を掴んで人気のない場所へ移動する。そこにも疎らに人が居たが、声を沈めて話せば聞こえない。スタースクリームは未だに状況が掴めていないまま連れ去られ、不機嫌になっているナマエの身体を積み上げられたコンテナの上に立たせ、目線を合わせて主張を開始した
……何時から、なんぞは知らないが日に日に不機嫌になっていく閣下、前にも増して何考えてるのかサッパリ分からんし、苛々してんのか爪ガッチンガッチンさせてるし、……ナマエとあの双子が戯れている姿をアイセンサーの中に入れようものなら途端におっそろしい形相で近くにいた俺の頭を鷲掴みにして壁にゴンゴン打ち付けるんだ。なのにそれで空いた壁の穴の責任は俺、と来たもんだ。不憫すぎて泣けてくるぞ!!
スタースクリームの泣き言のような説明を睨みつけるように聞いていたナマエが、
スタースクリームの説明が一通り終わった頃合で口を開く
「………まず第一に、だ」
≪何だ!≫
「…メガトロンは俺のことを好いてはいないだろう?」
≪その考えがもう既に甘ったれているんだ!≫
キー!とスタースクリームがヒステリックに地団駄を踏んだことによってコンテナがグラつく。慌ててしがみ付き、スタースクリームの――アイセンサーからあふれ出したオイルで塗れた――泣き顔を見上げる
≪もう!俺はどうしたら良い!毎日まいにち、宇宙に居た頃から閣下からの責め苦には耐えて来たが、まさかこんな理不尽な事で酷い目に遭うのはそれ以上に我慢出来ん!そしてそこでいい考えを思いついた!≫
「…………」
≪ナマエ!!!≫
「…お、はい」
≪貴様はオートボットのツインズのどちらが性的な意味で好きなのだ!≫
「…は、はぁ!?そ、んな、普通に相棒としては認めてるが、そ、そんな意味で好きなことあるわけ…!」
≪もうよく分からんツンデレはいい!要はどっちともそう言う関係じゃないんだな!?≫
「あ、ああ」
≪ならば俺の一生分の頼みだ。メガトロン様と番になれ≫
「……なんだと!?ツガイ!?」
≪俺の一生分だぞ?人間なんかとは訳も量も違うぞ?その俺がここまで言ってるんだぞ!!≫
「い、いや待て…」
迫り来たスタースクリームの顔も恐いが、何より突きつけられた条件が死ぬほど不可解で意味が分からない
何故だ、何故こうなった。そもそも何時メガトロンに俺は好かれた
あれか?
ディセプティコン軍の世話を任され承諾した時か?幾らなんでも早すぎる
ツインズの度重なる迷惑を逐一謝りに行った時か?好かれるようなことを言った覚えはない
どれだ、どれだ、どれなんだ
「…お、俺の意思は無視なのか」
≪知った事じゃないぞ。俺はいつだって閣下を第一に優先して考えているからな≫
大法螺吹きだ。こんな時だけNo.2ぶりやがって。お前が考えていることは結局、その先にある己の身一つだろう。『俺が真っ先に優先すること、それは俺、俺、そして俺だ』とか言うモットー持ってるくせに
心の中では悪態を吐きまくっているが、それを決して表には出さないでいるナマエの行動は大人、と言うよりかは悪態を言っても事態は良い方向には進んでいかないと知っているからだ。だからと言ってこのままその要求を承諾してもいいのか?いや、良いわけあるか
≪アー!オイ、こらスタースクリーム!!≫
≪ナマエを苛メてんじゃネーぞこらー!!≫
≪ゲゲッ…!!≫
「お前ら……!」
此方へ突進してきた赤と緑の色がこれほどまでに頼もしく感じたことはない
マッドフラップが伸ばしたワイヤーは難なくナマエの身体を掴み引き寄せ、
スキッズが放った右手のメガトンパンチは徐にスタースクリームの頬を直撃した
≪無事カ!?ナマエー!≫
「あ、ああ…」
≪ナマエとスタスクの姿が見えなかったから、なーんかあると思って心配してたんだよなー≫
≪それデ探しに来たラこれだもンナ≫
「……!」
ここまでツインズへの愛しさで溢れたのは言うまでもない
スタースクリームは吹き飛んでいた体制から立て直して涙目でナマエを見る
≪頼むナマエ!閣下のために!そして何より俺のために!!≫
≪アイツ、何言ってんだー?≫
「……スキッズ、マッドフラップ」
≪ア?≫
「もし俺が、メガトロンと交際し始めたらどうする?」
≪≪メガトロンフルボッコ≫≫
「………そうか」
可哀想だが、そう言うことだスタースクリーム すまん。どうかそのDVに堪えてくれ
≪…でも閣下の事は本当だぞ!それだけは忘れんなよナマエー!≫
…ああ、そうだったんだ。どうしよう