≪なァ、スキッズ 最近なんかツマんねーよナぁ≫
≪ナマエの眼鏡がオレ達に構ってくれねぇからだろぉ≫
≪クソーあのクソメガネー≫
≪堅物眼鏡野郎だクソー≫
オートボット格納庫の一角で双子が珍しくじっと座って何かを話していた
聴覚センサーを最大にして盗み聞きすると、双子はどうやらナマエのことを話していたらしい。
ナマエ一等軍曹はNEST隊員の一人で、無口で無愛想だが芯の真っ直ぐな青年だ。因みに眼鏡はかけていない(あいつ等が覚えた地球の悪口の一つに"堅物眼鏡"があったからそれを多用しているだけと見る)
レノックスやモーシャワーからも一目置かれているらしく、エリート思考なナマエは近々昇進するだろうと専らの噂だった
その事実を裏付けるように、ナマエは前より人一倍任務を任されていて、
基地に帰還する日間隔が長く開くようになり、
今回は三ヶ月姿を見ていなかった。
双子がナマエの姿がなく、暇だ暇だと言うのも頷ける。
アイツ等は、何故かあの無口で無愛想でエリート思考の軍人に懐いていたから
≪どうしたツインズ。暇そうだな 任務でも入れて貰うか?≫
≪オ、ジャズじゃん≫
≪任務なんて真っ平ごめんだぜ≫
≪冗談だ。今は呼び出しもないし、ゆっくりしてるなんて珍しいな≫
≪ナマエがイナい 暇だナー≫
マッドフラップがキョロキョロとアイセンサーを動かしても、
お目当ての人物が入ってくることはなかった。
確かナマエは今中東アジアの方に遠征に言っているはずだ。オプティマス達と共に
≪ナぁ、ジャズ。ナマエは後どれくらいで帰ってクる?≫
≪オレも知りたい≫
≪さぁなあ……だけど 司令官からさっきディセプティコンの殲滅が完了した、って通信が基地に入って来たから後少しで戻ってくるんじゃないか?≫
≪ホントかよ!≫
≪よし、入り口で見張っててよーぜマッドフラップ!≫
≪オう!≫
≪おい、あんまり他の隊員たちの迷惑になる場所にはいんなよ………ったく≫
お互いを何故か小突きあいながら入り口に向かって駆け出して行く二人を見送る
緑と赤の小さな双子は、無口で無愛想でエリート思考の人間が 大好きだから
基地入り口の端で、一応他の人間達の邪魔にならないように
さっきと同じく身を小さくさせて双子は座っていた
その目は一心に、離着陸を繰り返す航空機やジープや貨物車やらを追いかけていた
しかし、やはりお目当てのナマエの姿は見つからない
≪ナー、スキッズー ナマエはまだカよー?≫
≪まだだろーな≫
≪後どれくライなんダ?≫
≪オレが知るわけねぇだろ?≫
≪ケッ、使えネーぞこのブサイク!≫
≪オレとオマエ、同じ顔だ!!≫
騒々しく喧嘩を始めた二人。周りの隊員たちが止めようとしていたが、二人は
ど突き合い、転がり暴れているので人間には手が出せなかった。
仕方なく、一人の隊員がオートボットの誰かを呼んで止めて貰おうと動こうとすると、
喧騒の近くに一台のジープが停車した。ドアが開き、降りて来たのは双子が待ち望んでいた人物だった
「………帰って来て早々、最初に見た光景がこいつ等の喧嘩かよ………とことんコイツ等に呪われてんな俺…」
≪! ナマエ!≫
≪帰ってきたのかこの堅物眼鏡!≫
「だから俺は眼鏡じゃねーって言ってるだろ…やめろ、邪魔だ。喧嘩するなら他所に行け」
≪テメェが帰ってキタってのに他所に行くわけネェーだろ?≫
≪おい、遊べよナマエ。3ヶ月分遊べ≫
「煩い。報告が先だ。散れ」
≪じゃあ報告が終わったら遊べー≫
≪ソウだ そうダ≫
「解ったから付きまとうなアホ!」
左右を赤と緑に挟まれているナマエの姿を
仲間やオートボット達は楽しそうに見ていた。
同じように帰還してきたオプティマスとアイアンハイドがジャズに声をかける
≪報告はナマエのが終わってからにしようか≫
≪そうだな≫
≪お疲れさん オプティマス アイアンハイド。どうだった?≫
≪今回も一捻りだったぜ≫
≪ああ≫
≪いや、そういうことが聞きたいんでなくてな≫
ナマエが報告している間も、彼の周りをウロウロしていた双子を
ナマエがどついて嗜めている姿がカメラを通してモーシャワーにまで伝わってしまい、モーシャワーに呆れられ、焦るナマエを見て、レノックスは一人 笑いを噛み殺した