今日はNEST基地に身を置いていたディーノ
オートボット達全員に言い渡された任務を一人で着実にこなし、なるだけ早く帰宅しようとしている気が見え見えだったが、逆鱗を食らうので誰も指摘はしない
早く帰りたくて苛々しているディーノの目に、連日の睡眠不足が祟って意識が散漫になりミスしたコールズの姿が見つかってしまい、今は説教を受けている最中だった。唯の鬱憤とも言うようだ
≪ダラケてんじゃねーぞ、ヒューマン お前の気の緩みが命取り(帰宅時間が遅くなる)に繋がる、なんざご免だぜ≫
「…気をつけるよ、悪かったなディーノ」
≪もうちょっと真面目にやれ、ペルファボーレ≫
「………」
ディーノが去り、コールズを慰めてやろうと近寄ったレノックスにふと感じた疑問をぶつけてみる
「コールズ 今更言うのも何だが、アイツはナマエさん以外の人間には未だつれないから気にすん…」
「…大佐」
「何だ?」
「ディーノのイタリア語って、なにで覚えたんでしょうかね?」
コールズのその素朴すぎる疑問に、レノックスは困惑する
「…お得意のWebで調べたんじゃないのか?」
「…の割りには、ですよ?使い方とか、用法とか間違ってませんか?いや、俺イタリア語とかよくわかんねーっすけど」
賢いアイツ等トランスフォーマーだったら、Webとかで正しく使えるように勉強すると思うんですけど、いまいちディーノのはおかしいような…?俺の気のせいっすかね?と、コールズは笑って持ち場に戻って行った
後に残されたレノックスとコールズが提起したディーノのイタリア語についての問題は、上手く消化されず、レノックスはまた後で時間が出来たらナマエさんに電話して訊ねてみよう、あの人ならディーノのあらゆることを知ってるかもしれないからな、と割り切った
― ― ―
『あぁ…それはどうやら私のせいのようだ』
「あぁ……」
案の定と言われればそう、やはりか、と思えばそうだった
だが合点がいかないのは一体どういうタイミングでナマエさんがイタリア語を使ったのか、と言うことだ
『レノックス、私が隊長を務めていた隊の一人に伊国出身の奴が居ただろう?』
「――チェッテロですね!」
『そうだ。前に、チェッテロが婚約する為に故郷に戻ったと言う連絡があってね。イタリア語訛りで喋ってくるのが面白くて…少し齧ってたイタリア語を駆使して彼の母国語で会話していたんだ』
「なるほど」
『私が何を話してるのか気になったのか、ディーノが聞き耳?を立てていてね。会話が終わった後に訊かれたよ。≪さっきお前が話してた妙な言葉は何だ、英語じゃないのか≫ってね』
そして、せがまれるままに少し覚えていたイタリア語をディーノに教えてやったらしい。なるほど、ディーノはWebでイタリア語を知ったのではなかったようだ。
ディーノはよく、イタリア語を口ずさんでますよ。と、レノックスがナマエに教えると、ナマエは嬉しそうに声を上げた
『そうなのか!私の前では使ってくれないから、覚えておいてくれなかったのかと思ってたんだ』
「でも、使いどころがおかしいとウチの奴に指摘されていましたよ」
『あぁ…私の教え方が悪かったようだな。今度キチンと教え直すことにするよ』
「はい」
忙しいところ失礼しました。いやなに、と言って私用電話の電源を切る
ナマエに教えられた言葉を記憶し使っているディーノに、レノックスは笑みを漏らす
「…やっぱり ディーノはナマエさんが言っていた通り、だな」
仕事は終わらせているだろうか。そろそろディーノが帰りたくて暴れ出すかもしれない
そんな時はディーノにこう言ってやろう
『 Tesoro sarò in attesa 』
(ダーリンが待ってるぞ)