≪反抗期なんだ≫
≪誰が≫
≪ナマエが≫
≪…あの人間、今いくつだ≫
≪26歳だ≫
≪生まれて26年目か…それなら確かにオレも、オレという存在の素晴らしさに気付き始めて褒めちぎりまくってたっけな。もうかれこれン百万年も…≫
≪君自身の話は聞いていない≫
サイバトロン基地で優雅にエネルゴンタイムを取っていたところにズカズカやって来たくせに、偉そうに上から目線で相談に乗れとは。だがまあ付き合ってやろう。デストロンの反応が出ないせいで出撃命令もないから暇なんだ。とその前に、プロールの言う"ナマエ"ってのはどんな人間だったか?どいつもこいつも同じに見えるから思い出せねぇ。
≪人間年齢で成人しているくせに常に鼻の上から絆創膏が取れない奴だ≫
≪あー!あいつな、あいつ≫
≪思い出してもらえて良かった。では本題に移ろう。ナマエが反抗期なんだ、解決方法を提案してくれサンストリーカー≫
≪…相談相手間違ってんぜプロール≫
出会い頭の一言目から突っ込みを入れるべきだったが、なにを言い出してんだろうかこいつは。普段からクソマジメなプロールは、時たま突拍子もないことを素で言ってくるから困る。
≪そもそも反抗期ってなんだよ。具体的にどう、何に反抗してんだそいつは≫
≪以前から何度もナマエの無茶な行動に対して注意をして来ていたが、ここ最近になって素直に聞き入れてくれなくなった。私が何を言っても『分かったって、はいはい!』と返すばかり≫
≪うへぇ…めんどくせぇことに…≫
≪このままではナマエとのパートナー関係に亀裂が入ってしまいかねない。そうなる前に、何か手を打ちたい。よい案はないか≫
本当に困っているんだろう。いつにも増してプロールの目つきや口調が厳しい。もう少し合いの手に茶々を入れてやろうと思ったが、ここは大人しく相談に乗ってやるべきだろう。
今までプロールがこんな事を言って来たことは無かったから、ずっと良好な関係を築けてきてたはずだ。前に一度会っただけだったが、クソマジメちゃんなプロールとも上手く付き合えそうな、バカっぽい人間だったのにここに来てヤケクソ染みた言動をするなんて………。
≪……あー… いい考えはねぇ! 他の奴を当たってくれや!≫
≪…ただ考えることが面倒くさくなっただけじゃないのか、サンストリーカー?≫
≪う、うううるせぇな! 大体人間のことでオレが助言してやれることなんて無いって端から分かってただろ! 大体お前の方はどうなんだよプロール! 原因とか、心当たりとか、なんかねぇのか≫
≪心当たり、か……≫
そう言えば。
手のひらを拳で打ったプロールは表情一つ変えずに、以前ナマエにかけられた言葉を復唱する。
≪――『分かったよ母ちゃん!』 ――以前、ナマエにこう言われたことがあるのだが、これは何か関係して……≫
≪おいやべぇぞプロール お前口煩すぎてウザがられてんぜ≫
≪なに……?≫
ギョっとして、ハッとして、プロールはうろたえた。
何故かは分からないが自分がナマエに"ウザがられている"の事実を理解した。
口調も強めて、サンストリーカーに喰ってかかる。
≪な、何故だ! 確かに私は口煩く言ってきたかもしれないがそれは全てナマエの身が心配だったからで…≫
≪オレに向かって言うなよ! 本人に向かって言って来いよ、本人に!≫
≪ナマエは……今出かけてしまっている≫
≪オイオイ…あの人間単独でかぁ?危なくね?≫
≪そう思い私も行き先を訊ねたのだがナマエは答えてくれなくて…≫
ついにプロールは手で顔を覆いながら嘆き出した。
こいつ、あの人間と出会ってからすごく人間臭い仕草を取るようになったんだが自覚してるのか?
≪ああ…きっと今この時もあの自分を大切にしないバカはどこかで誰かを助け、怪我をしているのでは、と思うとスパークがじくじくと痛むのだがどうすれば……≫
≪ラチェットにでも看てもらえば≫
≪それもそうだな…少し行って来る…≫
項垂れながら、プロールは部屋を出て行った。
しかしサンストリーカーは考える。
大体にして、あいつの第一声が≪反抗期なんだ≫であったのもどうかと思う。
もうすでに、無自覚ながらも自分はナマエの親みたいな認識でいるんじゃないのか、あいつ。