スリープ状態から目覚めた時から、既に何かがおかしいとは感じていた。
自分の機体に来たした変調、それが何なのか、覚醒したばかりのブレインは正常に動いてくれなかったので、特に気にも留めないまま機体を起こした。
本来ならば、機体に違和感を感じたらメディカルチェックを受ける必要があるのだが、この軍の軍医はアイツだから、あまり行きたくないと言うのも本音だ。無駄に時間がかかるのだ、あいつのチェックは
艦内を歩きながら今日の任務を確認していると、反対方向からサウンドウェーブが歩いて来るのが見えた。サウンドウェーブ!と声をかけようと声帯モジュールを開こうとした
≪ サ゛、ウン゛ンド…!?≫
≪―――!?≫
雑音の混じった耳障りな音が出た。呼びかけようとしたナマエも、呼びかけられる前にナマエに気付いていたサウンドウェーブも、発されたその声に固まった
しかしナマエは冷静に、あぁ、感じていた変調はこれか、と気付く
一度出した声は引っ込める事は出来ず、明らかに声帯モジュールになんらかの支障を来たしているナマエに駆け寄った
≪!?≫
≪ア゛、いや、俺モ゛ 今、気付いたンダガァ゛……≫
やばいな、コレ。引き攣ったような声しか出ないし、何より目の前のサウンドウェーブが凄く心配してくれている。申し訳ない
≪―!≫
≪ノッ゛ク、アウトに゛? ソ、うだナ゛…≫
≪…!≫
もう喋らないで!とでも言いたいのか、サウンドウェーブの細い指がナマエの口元に添えられる
≪?≫
原因?特に思い当たる節はない
強いてあげるなら、声帯モジュールの稼動検査を怠っていたせいだろうか。と言うか絶対これだ
≪今日ハ゛、ァまり゛ 喋らなイ方ガ、イイな≫
≪……≫
必死に頷かれてしまえば此方も素直に引き下がるしかない。お互いの間に沈黙が来てしまう
≪……≫
≪…… …≫
≪ン゛…?≫
≪"少シ"≫
≪え…≫
≪"寂シイ"≫
切り貼りされた機械音声で告げられたその寂しそうな声に、ブレインがチリチリする
なんだこれは。
少し低い位置にあるサウンドウェーブの無機質な顔が、とても可愛らしく思えて仕方が無い
なんだこれは。
俺の勘違いでなければ、しょぼくれているであろうサウンドウェーブがとてもかわいい
なんだ これは
≪……サウン…、ド、…ウェーブ……≫
≪…!≫
≪マ、た後デ、たくサん゛、話、シヨウ≫
≪――≫
サウンドウェーブの頭を撫でてやる。早くノックアウトのところに行こう。サウンドウェーブの、そして俺自身のためにも、少しでも早く治してもらわないとな
なに?お前もノックアウトのところに行くのか?サウンドウェーブ、お前もどこか悪いのか?…心配?どういう意味だ?