捨てたふりをして花瓶の中
※双子の初恋主
≪イよう、ナマエ≫
≪今日も不景気そうな面だなー≫
「………またお前等か 消えろ」
≪ツレねぇぜ相棒≫
≪泣いちゃうぜ相棒≫
「知ったことか」
武器点検をしていたら、武器倉庫にまで足を運んできた暇人の双子を睨みつける。
此処ならば来ないだろう、と思った所にまでズカズカやって来るのだから、
もう隊内に俺の逃げ場はないのか、とナマエは項垂れる
「仕事中だ。帰れ」
≪まァ待てよナマエ≫
≪今日はオ前にイイもん持ってキテヤったぜ!≫
「……は?………!?」
双子の言葉にウンザリしながらもファイルリストから目を放して向き直ってやれば、一瞬にして視界が緑色で覆われる。スキッズではない。植物の匂いだ
≪驚いたカー?≫
≪プレゼントだぜ≫
「…プレゼント?俺に?」
何かと思えば、花束だった。
いや、花束と表すのもおこがましい程に雑草ばかりだった
八割をそこら辺にでも生えてそうな雑草と、二割の野花。黄色と白色の小さな花が、緑色の中でこじんまりと存在を主張している
「…………何のつもりだ」
≪イやー いつもナマエに迷惑かけてルンだから、恩返しシロってジャズが≫
≪やっぱり花束がイイだろ、ってレオが≫
「…………」
ただ集めただけのおざなりな花束。引っこ抜いてきたのか、根っこが付いているものもある。泥もついてるし、虫食い跡もあって汚いし、乾燥してるし…だが、
「………此処で廃棄すれば軍が汚れるから、一応預かっておいてやる」
双子はナマエの言った嫌味なんて理解していないのか、
ナマエが花束を受け取ったという事実に喜んでいる。
これでまた迷惑かけてもいいな!などと不吉なことを言う二人を倉庫内から追い払った
また一人になった倉庫内で、ナマエは溜息を吐いて花束を見る
誰も見ている者はいなかったので、ナマエは少しだけ口元を綻ばせた
ナマエの自室に、コップに水を張っているだけの簡易花瓶には、これまた不似合いな雑草ばかりの花束が、枯れ落ちてしまうその日まで鎮座していた