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ダイノボット(初代)


!64万企画小説


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ダイノボット達に教えておきたい大切なことが一つある。
デストロンのやっつけ方でも、能率のよい戦い方でもない。
日常行動における何たるかでも、目上に使う敬語の使い方その他でもない。

この世には"甘噛み"という概念が存在しているんだがご存知? ということだ。





ひしゃげて陥没した肩パーツを治してもらう為に今日もラチェット先生が番を勤めるリペアルームの戸を叩く。

≪またお前さんか≫

ノックの仕方だけで先生は来客が誰だか分かったらしい。連日お世話になりに来て申し訳ないですが、俺です。ナマエです先生

≪また派手にいかれたな。それで?今日はどんな風にして?≫
≪後方からスラージの尾っぽで締め上げられ、左右をスラッグ、スナールの角と頭で挟まれ、前方から飛翔してきたスワープに雁字搦めにされたところでグリムロックに肩を噛み砕かれました≫
≪今日もダイノボットたち勢揃いだな。モテモテじゃないか≫
≪モテモテ、とは って感じなんですが…≫

今日の痛みが尋常でなかった原因は、肩とコグとを繋いでいるケーブルがブチブチと千切れていたせいだ。これが壊れていると、車へトランスフォームした際にドアだけ腕という酷く不恰好な仕上がりになってしまう。武器は片方の手で持てばいいから戦闘に支障はないが、支障がないから溜息吐いて流せばいい問題、ってことにはならない。

サイバトロン軍にダイノボットたちが加わってから、毎日こんな調子だった。


≪オレの何がダイノボットたちをそうさせるの…≫
≪身体が赤いからかな?ほら、興奮色と言うだろう≫
≪それならアイアンハイドとかクリフとかにも向かって行くべきで――


≪ナマエー!!!≫


――うわっ来たァー!!!≫


なんということだろう。恐竜たちが大行進してきたせいで基地の壁が外側から吹き飛んだ。

出た!サイバトロンお得意のひき逃げアタックだ! 餌食となったのはナマエ! ラチェットのリペア器具数点! 以上だ!


≪ちょ、ちょっと待てグリムロいたいいたいたいたいイテェ!!潰れる!ボンネット潰れる!!≫
≪ナマエ ココにいた オレ グリムロック ナマエ サガシタ!≫
≪ナマエ アソベー≫
≪アソベー≫
≪ナマエ ウマーイ≫
≪ラ、ラチェットせんせーい!!!≫
≪あーホラお前たちやめないか。リペアルームをめちゃめちゃにするな。あとスワーブはナマエの頭から口を放すんだ≫


軍医に叱られたダイノボットたちは渋々、大人しく従った。スワーブの口は今もモゴモゴと動いている。ジャリジャリ、という音がしていた。

そして床に無惨な姿で倒れているナマエに、ラチェットが声をかける。


≪これは早急にホイルジャックと共に原因解明しなければ、君の身がもたないようだなナマエ。それに私の仕事も増える一方だ≫
≪……ぜひ、…おねがいします……≫


返事は弱々しいが、アイセンサーの光は鮮明であるし、スパークもしっかり輝いている。外部装甲はボロボロではあるが。

スナールたちは先ほど、ナマエに≪遊べ≫と言っていたことから察するに、やはりダイノボットたちはナマエに危害を与えようとしているのではなく、結果的に、彼らの強力すぎるパワーのせいで、純粋な戦闘力で劣るナマエがダメージを負うのであって、本来は"遊び相手"として見ているのだろう。
その証拠に、大人しくなった――と言うより落ち着いた――ダイノボットたちは床に伏しているナマエを気遣う言葉をかけている。


≪大丈夫カ? ナマエ オレ、グリムロック 強クかみすぎた 反省スル≫
≪あのな、グリムロック……甘噛みって、言葉…知ってるか?≫

≪ラチェット、早くナマエヲ治セ!≫
≪ナマエ、デストロンの 首デ サッカーしに行コウ!≫
≪ヤロウ! やろう!≫
≪オレたち、ナマエ スキ!≫


≪…By the Allspark………!≫


ナマエが泣き出してしまった。あれは、ダイノボットたちへの憎しみと愛情との狭間で揺れ動いている様子だ。
なんだかんだ、ナマエは甘い。


≪仲間を愛しすぎていると言うのも、考え物だなナマエ≫


ぐすん ラチェットは涙をこらえる真似をした。ナマエはそれを、今度こそ恨みがましそうに見ていたのだ。泣き真似してないで、早くオレを治してくださいよ、と。