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ニトロコンボイ(GF)


惑星スピーディアを――本人にはそんな気1ミクロンもなかったとしても――治めてきたリーダーであるニトロコンボイは今日、スピーディアを出て、ギャラクシーコンボイがリーダーとして立つサイバトロン軍に行くらしい。正直言って、あのニトロコンボイが誰かの下に就いている姿が全くと言って想像できない。想像さえも許さないほど"速さ"だけを追い求め、スピーディアに暮らしていた俺たちのことを省みもしなかったかつてのワンマンリーダーは、どうやらここに来て成長したようだ。
それは素直に祝福したい。おめでとう、と。最後にエクシリオンと繰り広げた激闘のレースに感動したぞって、それは素直に伝えてやってもいい。健闘を称えるに相応しい試合だったからだ。でもな、でもだぞ。



≪時たま君の体のメンテナンスをしてあげていた俺に対して別れの言葉一つないとかさすがニトロコンボイさまカッコいいなー痺れるなー憧れはしないなー≫

≪しっかり見送りに来ているじゃないかナマエ≫

≪そら来るさ!君が来ないんなら俺から行くしかないだろ!≫


そしてその発言ときた。もう許さんぞニトロコンボイめ。こんな時までもしっかり俺へのからかいの手を緩めないとはさすがリーダー様だ。

まあ、自ら足を運んでしまったと言うのは事実なわけであまり偉そうには言い出せないが、今の俺はだいぶセンチメンタルな気持ちで一杯になっていた。

もう、暫くはこの赤く美しい姿を見られないのかと思うとやはり寂しいものである。幾らニトロコンボイが、自分よりも遅い他人に対してあまり興味を抱かない傲慢な奴だったとしても、俺は、ニトロコンボイのことを まあ所謂尊敬とか、憧れとか、スキッズとは違ってもっと欲に満ちた感じで憧憬の念を持っていたんだが今さらになって我に返る。

この惑星を出てサイバトロンに行こうとしているニトロコンボイに、今頃「好きだ」なんて伝えたってどうなるんだよ。
それこそ"無意味"だ。ニトロコンボイが最も嫌がることだ。最後だからって気持ちが逸って伝えなきゃ、って思ったって、ニトロコンボイからしてみればきっと煩わしく思わせるだけに過ぎないだろう。

気持ち新たに他の宇宙へと飛び出していく君に対し、やっぱり、これはないなぁ


≪……ナマエ? 何か用があったんじゃないのか?≫

≪は!? よ、用?≫

≪さっきから何かを言いたそうにカメラアイをしどろもどろにさせているだろ。バレバレだぞ≫



昔よりもずっと穏やかに笑うようになったニトロコンボイのせいで、俺のスパークは動悸が治まらないわけだがこのまま此処にいてもきっとこの動悸は止まったりしない。
長い長い片思いだ。もう、何百年も、何千年も続けている。そろそろ期限の切れ時なんかな、なんて思ったりして、いやもう少しあと少し



≪……言いたいことがあるなら早く言え。エクシリオンがせっついて来てるんだ≫


ニトロコンボイが指差す方向には確かにエクシリオンや他のサイバトロン達の姿が見える。


≪…言わねー≫

≪なんだ、それは≫

≪まあ、一つだけ言えるとしたら、俺は君が走っている姿が好きなので、ここを出て行ってもどこか別の惑星で走っててくれよ≫



伝えたい気持ちの億分の一も込められてはない言葉だったけど、ニトロコンボイがアイを真ん丸くさせて驚いてくれた。好きとか、ナマエに言われるとは思ってなかったと言いたげな顔だな。失礼な奴め



≪…ナマエも一緒に来るか? 本当は一緒に来たいんじゃないのか?≫

≪バカ言え、俺はただのメンテナンス用だぞ。戦いもレースも得意じゃないんだ。行けねーよ≫

≪…そうか じゃあな≫

≪ おう≫



早く行ってしまえ、バカ野郎め こっち振り返ったりすんな