!ロストエイジハウンド
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ナマエが顔を手で覆いながら帰ってきた。
誰かにいじめられたのか?
カツアゲにでも遭ったか?
いや、そうではない。映画を見たあと、ナマエは大体こんな状態になって帰って来る。
人間のやる事は未だに多く理解が及ばないものがあるが、何かに興奮している時の状態は手に負えないものばかりだ、とハウンドは常々思っていた。
『……それで、今回はどうだったんだ?』
「ハウンドに俺のじいちゃんになってほしい」
『…いつもと感想が変わっとらんぞ』
「うぅ、う、ハウンドかっちょいい……かっちょいい……」
そしてうわ言のように同じ言葉を繰り返す。
この、アドバンスドシリーズハウンドの持ち主でもあるナマエは、男子高校生ながら感受性がとても豊かなごく一般的な人間である。
今日は日曜日。
地元最後の上映日ということで、"トランスフォーマーロストエイジ"の見納めに行って、今回もまた興奮して来たようだった。
「デカいスクリーンでのハウンドの勇姿しっかり焼き付けて来た……これでDVD発売まで持ちこたえられそう……」
『そいつは良かったな』
「ハウンドぉ…俺のじいちゃんになってくれぇ……」
『ナマエみたいなヒヨッコを孫とは認めんぞ』
「まじで。今から鍛えるんで待っててくれますか……」
このやり取りを交わすのもこれで何度目になるか分からない。
公開日初日、同じく興奮冷めやらぬまま玩具ブースに駆け込んだナマエの手に抱えられたあの日から、ハウンドはそんなナマエの姿ばかりを目にしている気がしていた。
『…仕方ねぇな。まずは"孫見習い"からスタートさせてやっても構わねぇぞ』
「孫見習い?なにそれ!」
まったく、飽きのこない持ち主さまだ。