！フリリク企画作品
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どんがらがっしゃーん！
実に愉快な、それでいて爽快な音がNEST基地中に響き渡った。
積載されていたコンテナ群が、ぶつかってきた鋼の巨体の重みに耐え切れずに倒れて行った音だ。
現場の近くにいたNESTの隊員たちは大騒ぎ。すぐに元の形に戻せと、リフトの手配を始める。そして原因とも言えるトランスフォーマーに向かって立ち退きを要求することも忘れずに。
「――おいナマエ！ディーノ！！ 痴話喧嘩ならもっと何もない場所で二人でやってくれ！」
≪何が痴話喧嘩だ！≫
≪誰が痴話喧嘩だ！≫
声を揃えて反発し合った二人は、"言葉を被せた"ことに対してまた小競り合いを始めてしまう。
体が大きく重厚な姿をしているナマエが一度手を振りかざせば、どちらかと言えば細身のディーノは多少の抵抗のあとで後ろへと追いやられる。だが負けじと自慢のワイヤーでナマエの足をすくっては、無様に地面へと突き倒すのがディーノの仕返しだ。
≪あれほどオレの前を走んなって言ったよなァ？ナマエ！≫
≪お前が俺の後をついて来てたんだろうが、ディーノ！≫
今回の喧嘩の原因は、先の任務での移動中に起きたことにある。
乾いた砂が吹き交う乾燥地帯での紛争抑止任務は、ディーノ、ナマエ、そしてサイドスワイプとバンブルビーに任された。
しかしその場所は、戦争が激化した影響で荒れた無法地帯。
舗装されていない道を走ることにすら嫌悪を抱くディーノは、何よりも"砂埃"を嫌っている。そのことを、仲間のオートボットたちは知っていた筈なのに。
≪お前のそのデッケェタイヤで、一体どれだけの量の砂を後ろを走ってたオレに浴びせて来たと思ってやがる！任務中だからクレームを自粛してやってたら、イライラが余計大きくなってきたぜ！≫
≪おー、おー、そうかい、そうかい。お前さんのご自慢のボディを汚しちまったみたいで悪かったなぁ？念入りにシャワー浴びたのか？パーツの隙間にまで砂が入り込んじまったりしてないか？≫
≪…〜っ！ まずは謝罪しろ、謝罪を！≫
怒ったディーノがナマエの胸部装甲を叩くがビクともしない。形だけでも強気に出てやろうというディーノの魂胆だった。
それを分かっているナマエは更に胸を張って、その細い手を押し返す。≪だからさっきも言ったけどな、≫
≪お前が俺の後ろを走ってたのが悪いんだろ？そんなに嫌なんだったら、多少のフォーメーションチェンジなんか気にしないで俺の前なり斜め前なり隣でも走ってやあ良かったじゃないか≫
ぐっ。
ディーノは少しだけ表情を歪め、バツの悪そうな顔をした。そこを指摘されたくなかったと、言外に言っているようだ。ナマエの追求してくる言葉が、正論だからだろう。
≪…図体のデケェお前を盾代わりにして、人間の使うミサイルを避けるって寸法だったんだよ≫
≪……なに！？おまえ、俺をいつもそんな風に扱ってたわけか！？≫
驚いたナマエのアイカメラが大きく見開かれる。しまった、と思っても口にしてしまった言葉は戻せない。
≪…っ、悪いのかよ！？≫
≪わ、≫
≪………「わ」、なんなんだよ≫
このタイミングでボコーダーが破損したわけでもないだろうに、何故か一度言葉を区切ったナマエは、ディーノに急かされると慌てて≪――悪いわけあるか！≫と吠えた。だろうな、デコイにされてたって知ったら誰だって腹立つに決まってる……
ん？ 待て今ナマエはどっちの言葉を口にした？ "わるいわけあるか"？
≪俺に護られたいってんなら、どうしてそう素直に言わないんだ！！≫
≪―――ハァ！！？≫
≪だってそうだろ！ 俺はオートボットの中でも屈強なタイプだから、皆の盾代わりになるのは請け負って当然の仕事だ。でもディーノのことだからそんな恩情は必要ないんだろって、だったらどうして身軽なお前の動きを制限させちまうデッケェ図体した俺の後ろに一々付いてんのかと思ったら…≫
≪お、おおお、おま、なに、頓珍漢なこと言っ…！！≫
≪なぁに遠慮すんな。ディーノことは嫌いだが、好きでもある≫
≪スッ、！？≫
やけにニコヤカな笑みを浮かべているナマエはおもむろにディーノの肩を抱き寄せ、
≪――可愛い奴め！≫
ディーノの身体を流れている電子回路が全てひっくり返るようなむず痒さを感じて、どうにも堪らずにディーノは大きく叫び声を上げた。
コンテナの整理をしていたNEST隊員たちがその声量に驚いて荷を持ったままずっこける。
降りかかってくるお叱りの言葉も聞きたくなかったし、何よりもナマエと離れたかったディーノは瞬時にステルス能力を使って遁走を計る。ナマエに対して心にもない嘘を言ってしまった、なんて言う後悔はもうどこかへ消えてしまっていた。
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◆TF男主でディーノの悪友
リクエストありがとうございました！