艦内廊下を機材を抱えたまま歩いていると、背中に思い切り何かをぶっ刺された
痛みと衝撃で、持っていた手荷物がガランガランと音を立てて落ちる
自分の身に何が起こったのかは、充分すぎる程にわかっている
ギギギ…と嫌々後ろを振り向けば、
俺の背中にロッドをぶっ刺しておきながら、
大変良い笑顔を浮かべているノックアウトさんでした
≪……ノックアウト先生、何するんですか?≫
≪すまない。うっかりしていたんだ≫
≪結構かなり奥深くまで貫通してるんですが……≫
≪ああこれは酷い怪我だな!どうれ、私が今すぐ診てやろうじゃないか≫
≪何をいけしゃあしゃあと…!ちょ、≫
自分の方が体格は良いはずなのに、細身の腕のどこにそんな力があるのかと疑いたくなってしまうぐらいに力強い腕にズルズルと引っ張られて行く。機材は放置されたままだ
ノックアウト先生の足は、迷いなくリペアルームを目指している
いつもこうだ
俺が同僚と話をしている最中にブスリ
俺がエネルギーを補給している間にブスリ
俺がスリープモードに付いた時にブスリ
何が狙いなのかは分かっている
俺にわざと怪我をさせて、そして自分自身で手当てがしたいだけなのだそうだ
全く意味が分からないし、一回痛い思いをしなければならない此方の身にもなって頂きたいものなのだが、
あちらの方が階級が上だし曲がりなりにもこの軍の軍医だから文句は言えない
だから今日もこうして大人しく悪態の1つも言えず、ずるずると引っ張られて行くんだ
≪…ノックアウト先生、もう少し優しく刺してくれませんか…≫
≪ナマエを見ていると興奮して力の加減が分からなくなるんだ。愛の重さだと思ってくれれば良いよ≫
≪……重い≫
≪何か言ったか?≫
≪いだだだだだだだだだだ!!すみませんすみません!!!≫
ああ、危うく背中からスパークを引き千切られるところだった。怖い