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「#幼馴染」のBL小説を読む
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どこにだって行けやしないよ


この戦争が終われば俺は死ぬ予定だった




タイガーパックス戦で俺は傷だらけのバンブルビーを見捨てて敵に背中を向けた
その代償と言うわけでもないが、俺は両目を失い(ディセプティコンの狙撃兵に撃ち抜かれた)
俺よりも遥かにお喋りで仲間内でも取り分け明るい性格だったバンブルビーは何の因果か喉をメガトロンに潰され喋れなくなった


衛生班に回収され、そこでバンブルビーと再会した時、俺は直ぐに逃げ出した事を後悔した
彼の喉が潰されるとは考えていなかったのだ



俺はバンブルビーが好きだった。それは彼の性格を大分指していたのだと思う
戦時中の奴には似合わない程の陽気な奴
時折煩わしいと思っていた反面、仲間たちにとっても俺にとっても、無くてはならない奴だった、バンブルビーは

そのバンブルビーの発声装置が潰されてしまった
これでは彼はもう話すことが出来なくなってしまったのだ
あのラチェット軍医でさえ顔を顰める程だ。容態は慮しくなかったのだろう


だから寝台の上で負傷したバンブルビーを見て俺は思った
――俺が逃げ出さず少しでもメガトロンに立ち向かっていれば、もしかしたらバンブルビーは喉ではなく別の箇所を潰されていたのではないか、と


それがスパークであったらお終いだが、喉以外の部位なら、俺は何処でも良かったのかもしれない
他人の体の事なのによくもそんな考えが浮かんだものだと思う



しかし俺はそこで莫迦な考えが浮かんだ。
もしもこの戦争が終結した時、俺が生きて、バンブルビーも生きていれば、そして彼の喉が未だ治っていなかったとしたら、

俺は死ぬつもりだった。それが何の為であるのか、大義名分などない。
償いでも復讐でもそんなモノでも何でもない。ただ俺は、戦いが終わっても尚喉を潰されたままのバンブルビーの隣に居たくなかったのかもしれない。
それが無言の圧迫の様に思えたのだろう。嫌が応でも思い出す、彼の喉は俺の引き金だったのだ












そしてオールスパークを巡る我々の戦争に、一応だが、終止符が打たれた

ディセプティコンの奴らの返り血がこびり付いた胸部のソレを見下ろす
生き延びた、と言う感じがしない。満身創痍であるからだろうか、それとも、あのメガトロンを敵にした戦いに勝てたことが現実味を帯びていないからだろうか



≪"何をボケッとしてるの?"≫

≪……バンブルビー……≫



地球に来てから、ラジオ回線でツギハギだらけの会話術、と言うものを取得したバンブルビー
元のようなお喋りが戻ってくるかと思ったが、彼から発せられるのは彼の声ではないし、何とも落ち着かない気分になる



≪"帰還命令よ" "みんな、待ってる"≫



指差された方向を釣られて見ると、なるほどオートボットの仲間たちが集合し、人間共と共に基地へ帰還しようとしているところだった

仲間たちの背中を見ながら言う



≪……俺はいいよ≫

≪…?≫



不思議そうな顔で見返されても、告げる事は出来ない

最期を迎え入れるのが母星ではなく、別の惑星な事は、残念だが



≪…後から、追いつくようにする≫

≪………≫

≪だから、バンブルビーは皆と一緒に先に…≫


そう言って見下ろしたバンブルビーの顔が、不機嫌そうに歪んでいる


≪………… ィ、≫

≪?…バンブルビー…?≫



≪…ィヤ゛ダァア…!≫


≪ なっ――!?≫



今聴こえてきた、しゃがれたような、引きつったような低い音はもしかしなくても、



≪ビ、ビー! お前、喋れるようになったのか!?≫



昔のように思わず愛称で呼んでしまった俺に気付かず、そして俺の問いにも答えなかったバンブルビーは俺の身体に勢いよくぶつかってきた
胸部のボンネット同士がぶつかり合い、鈍い金属音が辺りに響く



≪…ナマエ、モ、イ゛ッショニ……カエ、ル゛…!≫

≪お、おいビー、無理して喋ろうとするな!≫



俺でも悟った。バンブルビーはかなり無理して今自分の声で喋っている

静止の声を掛けても、バンブルビーは俺に抱きついたまま首を左右に振る
背中のウィングが、当人の気持ちを表現するかのように上がり下がりを繰り返している



≪ナマエ゛…ッ!≫

≪…えっ!≫



久しぶりに、バンブルビーの声によって呼ばれた自分の名前に身体が強張る



≪…ハナレ、ナィデェ゛…!≫

≪!!≫



キツく回されたバンブルビーの腕は、他の奴らが居なくなった後も放れなかった