・蜜のような罠 続編
思えば今朝から占いは最悪だった。『TODAY is HAPPY!』なんて言うふざけたこの占い番組は前から好きじゃなかったんだ。司会者2人が朝に似つかわしい、清清しいほどウザい。奴らの口からどんな悪評が出たって今日の運勢をアンラッキー、だって思えるような奴はいないんじゃないかってくらい。
そんなジェニファーとアレキサンダー2人の口から告げられた『ソーリー!Libraのyouは今日一日アンハッピー!買い物に行ったら財布は落とすし携帯落とすし肩も落ちるしで最悪な日になるわよ!特に今日は昔の知り合いには会わない方がいいわ!絶対にいい事ないから!』の言葉に従って大人しく家に引きこもっていればよかったのだ、
それに背いて買い物に出かけた俺の反抗心は、脆くも運勢と言うモノに嘲笑われてしまった
≪おやお前は、以前私の『ホログラム浮かべてバカな人間達を欺いて平和にドライブしよう作戦』に快く協力してくれたナマエ君ではないか≫
「……………………」
≪おお、それが人間のする"NIGAMUSHI"を噛み潰した時の顔か。覚えておこう≫
「おい何録ってるんだよ!!」
多分ダークナイトのジョーカーもここまで明らかな盗撮はしないんじゃないかってぐらいだ
おや、なんで分かったのだろう、みたいな顔するな。お前の目から露骨にあの時みたいな青いビーム出てるじゃねぇか
≪その後経過はどうだ?≫
「……経過?」
俺がこのロボットと出くわしてしまったことを認めたくなくて葛藤してるって言うのにどうしてこんなにフレンドリーに話しかけてくるんだコイツ
あぁでも俺も返事しちゃった……
≪恐らく無害だとは思うが、一応センサーの悪影響なんかは見られないかな?と言う意味だ≫
「えっやっぱアレなんか悪くなるのか!!?そう言われると最近腹の辺りが妙に痛くて」
≪それは冷えから来る内傷だろう。身体を温かくして寝ることだ≫
「……どうも……」
何でそんなこと知ってるんだコイツ
≪『何でそんなこと知ってるんだコイツ』と言いたそうな顔だな≫
「(何こいつ怖い)」
≪それは私が軍医だからだ!≫
「ぐんい?」
≪軍の医者だ。相変わらずオツムはバカのようだな≫
一度ならず二度までもバカと言われてしまって結構腹が立ってるわけだが。
しかしどうにか此処を穏便にやり過ごして家に帰りたい
直ぐに帰りたい。持てる力の全てを足に結集させて、歴代好記録で家に帰りたい
「…じゃあ帰って辞書引いて勉強してみますね。デハ、サヨウナラ」
≪待って。そんなに急いで帰ろうとしなくてもいいじゃないか。折角周りには他の人間もいないのに≫
だから帰りたいんだよ、人の心は読めるくせにそう言う都合イイとこだけ読めないとかどうなってるんだよ
「……まだ、何か」
≪用と言うわけでもないんだがな、そう、ナマエに訊ねたいことがあったんだ≫
「お、俺に…?」
そう身構えるな、と言われたが、悪いが身構えるに決まってる
何だ?今度は何をスキャンされるんだ?俺の個人情報は前回で全部曝け出しただろう!
≪"オートボット" ―この単語に聞き覚えはないか?≫
「………オートボットぉ? そんなの初めて聞い―――」
たことないことない。
俺が清掃員のバイトしてるジュニアスクールの生徒達が
隠れてコソコソ会話してるのを立ち聞きしてしまった時に一緒に聞いた覚えがあるような、
あっと言う顔をした俺に、ノックアウトはニヤ、と悪そうな笑顔を浮かべた
≪…そうか、知ってるようだな。 ならすまないが私と一緒に来てもらおうか≫
「は、あ!?今度は映像だけじゃなくて、本体を連れてこうってのか!!」
≪もう少しナマエとお話がしたくなったんでね≫
「ちょ、ちょっと待て、俺はお前と喋ることなんてない」
≪私はお前のことはよく知っているが、お前は私のことをよく知らないだろう?だから訊きたいことは沢山ある筈だ。サービスデーだ、何でも答えてやろう。私のスリーサイズから言おうか≫
「や、やめろ放せ、オイ―――」
何がサービスデーだよ!
アンハッピーな一日だ!!