TF男主ログ | ナノ
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
まるでうたうように


ナマエはバンブルの先輩のような存在で、
仲間内ではまだまだ未熟だったバンブルの世話をコンボイに任されてからと言うものの、
彼はバンブルのちょうど良いお目付け役として日々を任されていた。


「マイスターとは同型なのか?」と訊ねられることが多いナマエだが、
決して彼はマイスターと同型のトランスフォーマーではない。
しかし酷似する見た目を、ナマエは厭と思ったことは一度とてない。
マイスターは彼が尊敬している者達の一人だったから。


ナマエのマイスターへの敬愛度は半端ではなかった。
普段は知的で冷静なナマエが、マイスターの前では童心に帰った幼子のようにマイスターの後ろを付いて周り、色々な経験や知識を吸収していく。
マイスターもナマエのことを可愛がっており、周りから見ても誰もが羨む師弟の関係だった



バンブルはそれがひどく羨ましかった。
ナマエに好かれているマイスターも、ナマエに師事をあおがれているマイスターも、
それは言うなれば嫉妬に近い感情と呼ばれるものだった。









《バンブル。またお前はスパイクと一緒に街へ出ていたな》

《えへへ…ごめんよナマエ。スパイクがあんまりに強請るもんだからさ》

《いつ襲撃が来るか分からないから、あれほど控えろと言った筈だ。それを守らなければ、お前だけでなくスパイクまでも危険に晒すことになるんだぞ。分かっているのか》

《……うん》



ほら酷い。

マイスター相手には《師匠!お帰りなさい!偵察は如何でしたか?》とか《お疲れではないですか?俺が代わりにやっておくので、師匠は暫く休んで下さい》とかって
すっごく柔らかい言葉ばっかりなのに、オイラにはいつもきつい言葉ばっかり

でも分かってる。ナマエの言う事は全てが正しい。
そして全部オイラがイケナイ。
だから何も言い返せないし、言い返すつもりも端から起きやしない

ああ、ナマエが上から睨んでくる。ごめんよ、ナマエ
いっつもそんな険しい顔させて。




《……ごめんなさい》

《……………》

《次からは、スパイクにお願いされても絶対に遠乗りしないよ》

《…………》

《…だから…、許してナマエ。オイラ……》

《・・・・・・・はぁ》



身体が跳ねる。またおいらはナマエに溜息を吐かせてしまった。
多分この後は、《…もういい》って言ってオイラを置いて持ち場に戻ってくんだ。一回も振り向かないで

ナマエはきっとオイラの世話係の仕事が嫌なんだな、って、そう思う
ナマエはオイラのことで、あまり笑顔を見せてくれたことがない。
いつもアイセンサーはバイザーの下に隠されていて、笑顔と言っても口元でしか判別できないけれど、ナマエはあまり笑ってくれない
それはきっとオイラが駄目な奴だからだ。ごめん、ごめんなさい、ナマエ、
オイラ頑張って一人前になるよ。偵察だけじゃなくて、戦闘も任されるぐらいに、ナマエを戦いでサポート出来るぐらいに強くなるから、だから、



《…嫌いにならないで……、ナマエ……、》

《…!……………》



顔を上げられない。きっとナマエはオイラを冷たい目で睨んでるだろうから




《………馬鹿。顔を上げろバンブル》

《え…》

《ほら、怒ってないから》



ナマエが、わらってる、
しょうがない奴だな、そう言うナマエの口元には、微笑が浮かべられてた。え、う、うそ



《…あのなバンブル。俺はお前のことを駄目な奴、とか、めんどくさい奴、とかって、そりゃ思うときだってある》

《!》

《こら、話は最後まで聞け。………でもな、俺はお前のことを"嫌い"だなんて思ったことは一度もない。安心しろ》

《っ、ナマエ…!》

《うぉっ、!…ったく、子守役も暇じゃねぇな。…バンブル》



飛びついたナマエの身体は、優しくオイラを抱きしめ返してくれた。
いつもその声音は主にマイスターを呼ぶ時に出されていたけど、
今は、今のナマエは、その声音でオイラの名前を呼んでいる。マイスターじゃなくて、オイラの名前を、