オプティマスから御代なんて貰えない。オプティマスが通貨と呼ばれる類のものを持ってないから。あいつがガソスタに来て、「気休め」に給油していく時、俺はこっそりと自分の財布からそれを支払う。それぐらいはしたい。オプティマスにしてやれる俺の仕事以外でのことだ。石油が高騰しているこの時代に、一学生の俺には少しキツイ値段でもある。まあ良いや、と思えるのは、相手がオプティマスだからだろうか
ガソリンスタンドと言う嫌が応にも車と触れ合う職場に身を置いてるせいなのか、最近では仕事外でも目が車を追うようになった。たまに見る日本製の車、俺のような貧乏苦学生にはとても手の出せない高級車、果てには飛行機や建築車にまで目は移る。そして考えることはたった一つ
「…なんつーんだ…、やっぱり、同じアレでも"オプティマス"が一番気高さ醸し出してんよなぁ…」
オプティマスと同じピーターベルトのトレーラートラックが大掛かりにガソスタを出て行くのを頭を下げながら見送る。最近ではよく、事あるごとにオプティマスの顔が浮かんできてしまう。客とオプティマスを比べてみているだなんて、失礼すぎだろ自分
「…まぁしょうがねぇよな オプティマスはダチだもんな」
うんうん、と唸っていると先輩に呼ばれた。気がつけばバイト終了時刻だった
思えば、俺がオプティマスと出会ったのもガソリンスタンドだった、と帰り道を歩きながらふと思う
ガソスタ前で何故か一向に動こうとしないトラックを不振に思って俺が近寄って、中に人が見当たらないことを確認して首を傾げていたら、トラックの方から俺に話しかけてきたんだからな。「"ガソリンスタンド"と言うのは、ここで合っているだろうか」だってよ。車がガソスタかどうか確かめてきてんだぜまったく
「……あーあ」
会いてぇな、とは思うが、あっちだって忙しい
俺からオプティマスを呼びつけるなんてそんなおこがましい事も出来るわけない
そもそも呼ぶ理由はなんだ?
「会いたいから」「話がしたかったから」「顔が見たかったから」何て人間くせぇバカバカしい理由で………
≪ナマエ≫
「……オ、オプティマス…」
名前を呼ばれて振り返ったら一台のトレーラートラックがライトを点滅させて待っていたなんて、 どこのドラマだオイ
≪バイトは終わったのか?≫
「あ、ああ」
≪そうか…会えてよかった≫
「何か、用事だったか?」
≪いや…… 顔が見たくなったのだ≫
忘れていた
オプティマスも、『人間型思考』の持ち主だったことを
「……偶然だな、俺もオプティマスに会いたいと思ってたとこだ」
≪そうか。タイミングが良くて助かったか≫
「おう どっか連れてってくれるのか?」
≪ナマエが望むなら、時間の許す限り何処へでも≫
本当に、頼もしいトラックさんだ