≪やいラチェット!テメェ、この間はよくも俺を治療しておめおめと生き長らえさせたな!!≫
≪ふむ。延命治療を施し各パーツも完璧に治したと言うのに、そのお礼が文句だとは。最近の若者のブレインはよく分からんな≫
≪てめ、この耄碌医者!お前バカなのか!?≫
≪そんなつもりはないが≫
≪テメェはオートボットだ!おら、一緒に復唱してみろ!ラチェットはオートボット!≫
≪ラチェットはオートボット≫
≪そしてこの俺、ナマエはディセプティコン!≫
≪ナマエはディセプティコン≫
≪ほら見ろ思い知れバカ!!≫
≪何をかな?≫
≪お前やっぱバカー!!≫
此処がNEST基地であるかは周知の事実
両軍のトップが休戦協定を結んだ影響で敵味方関係なく、トランスフォーマー達の駐留の場として落ち着いたこの基地の一画、ラチェットのラボに、まだそう年端も行かぬディセプティコンが飛び入ってきた
≪俺とお前、敵だろ!?何でディセプティコンの俺を治療なんかしちゃってんだ!?≫
≪今は休戦協定を結んでいる。敵も味方もないだろう?≫
≪俺は知ってるぞ!お前、サイバトロン星に居た頃から負傷してる奴見つけたらそれがどちらだとも関係なしに治療してたらしいな≫
≪そんなこともあったかね≫
≪何でだ!?そこで敵の俺を助けたって、どうせはそれがマイナスに繋がるかもしれねーじゃんっ≫
≪何でと言われても、それは私のスパークに言ってくれないかね≫
≪根底からそうなのか!?≫
≪そうだよ≫
≪……ありえねー≫
勢いを削がれたようで、ナマエはズルズルと地べたに座った
ラチェットも、ナマエが入ってくる前にやっていた作業に戻る
だがナマエはまだ食い下がってきた。ラチェットの思考に、賛同しかねている
≪…お前、誰にでもそうなのか≫
≪ああ、そうだとも。だがね、私も見境がないわけじゃない≫
≪…へぇ?≫
≪殺すときは殺す。見捨てる時は見捨てる。当たり前じゃないか≫
≪じゃあ、何で俺は助けたんだよ≫
≪お前さんの負傷理由があまりに馬鹿馬鹿しかったからに他ないさ≫
≪うぐっ……≫
バックファイアーと小競り合いをしていたら、向こうを本気にさせて一発でかいの食らって一撃ダウン
恥ずかしすぎてメガトロンの耳に届いてやしないかと今もハラハラしていることをラチェットは知っていたらしい
≪な、何で知ってる!≫
≪大体察しが付くからな≫
≪おま、すげ!≫
畏怖の感情を込めた目でラチェットを見る。畏怖の感情を込めた目で見られている方は、立ち上がり、ナマエをおったてた
≪さぁ 元気な者は此処から出ていってもらおう。もう後少しで、修行好きの似たもの師弟が沢山傷をこさえてやってくるだろうからね≫
≪…分かったよ。でもこれだけは言っとくぜラチェット≫
≪なにかね?≫
≪………助かったぜ!サンキュな!じゃっ!!≫
ビークルモードにトランスフォームし、ナマエは勢いよくラボを出て行った。
ラチェットの予想通りに、申し訳ないような顔を浮かべ、体中を傷跡だらけにした似たもの師弟が顔を現す
≪毎度まいど申し訳ないがラチェット、今日もたの……ん?≫
≪ラチェット、何をそんなにぼうっとしてるんだ?≫
≪…ん?ああ、お前達か。私はぼうっとしてたかな?≫
≪してたぜ。何見てたんだ?≫
≪…いや、ただの元気な若者だ≫
≪…は?≫
≪耄碌したか≫
≪黙れこの馬鹿者。治してやらんぞ?≫