巨大輸送機であるストラトスフィアと、
その兄弟機――兄に当たるナマエがロボットモードで立っている姿は、いっそ壮観だった
その背丈はビークルモードのオプティマスでさえも容易に収納出来ることから分かるとおりに大柄であり、
普段は基地の者達の邪魔にならないように、大型輸送機兄弟は基地の隅の方で行動することが多かった
専ら、世界あちらこちらへと動き回っている2人が同時に暇を持て余しているのは、いいことなのか悪いことなのか
≪スフィア、あのちっこいのが見当たらんぞ。今日は居ないのか≫
≪そんな連絡は受けていない。何処かで走り回ってることだろう≫
≪そうかそうか 早くちっこいのの顔が見たいぞ≫
≪……その呼び名、ジョルトは気に入っていないようだが?ナマエ≫
≪知ったことか。俺からしてみればちっこいので充分だ≫
些か感情中枢が豪快に作られている兄、ナマエの言葉にストラトスフィアは溜息を吐く。
兄は大層ちっこいの…ジョルトを気に入り可愛がっていた。
まだ我々がセイバートロン星に居た頃からの付き合いだが、
傍から見ても兄のジョルトの可愛がりっぷりには呆れるばかりだ
≪スフィア、次の任務は何時ごろ入る?≫
≪私が知る筈ないだろう≫
≪ちっ、急に入っては面倒だな。此方からジョルトを探しに行きたいが、それも出来んのか!≫
≪向こうにとっては、有難迷惑な話だろうな≫
≪口が過ぎるぞスフィア 兄に口答えか?≫
≪……プロトフォームの完成が1ナノ秒早かっただけで兄気取りなお前にはウンザリする≫
≪…言ったな?≫
≪ああ、言った≫
一歩後ずさり、カメラアイの照準を絞り相手を睨み付ける
巨大な両足が地面を踏むたびに、基地には小さな振動が伝わる
野次馬も群がってきた。一定の距離を置いて
両者、両翼をミサイル砲に変形させ不穏な空気を漂わす
≪降参なら今のうちだぞ?スフィア≫
≪それはこちらの台詞だナマエ≫
一触即発、臨戦態勢な2人の間に、
基地の向こう側から猛スピードで走り寄って来る青い車の陰
臆することもなく、その存在は2人…ナマエに駆け寄った
≪ナマエ!!≫
≪ジョルト!≫
ストラトスフィアに向けていた視線をロボットモードになって足にしがみついてくるジョルトに向けた
ナマエからはすっかり戦闘の空気が消えたことを確認したストラトスフィアは、食い下がるわけでもなく、静かに翼を元に戻した
≪2人がまた喧嘩してるって通信があったから来てみたら…またやってたのか?≫
≪スフィアが悪いんだ。そこを違えるなよちっこいの≫
≪知ってるか?ナマエ 喧嘩両成敗、って言うんだぜ。ってか、ちっこいのって言うな!お前ら2人が一際でかいだけだろ!≫
≪そうか、悔しいかちっこいの≫
≪悔しくなんかない!≫
ジョルトの存在によって、すっかり穏やかになった現金な兄を
弟は微妙な表情を浮かべ見守る。
同型が、ああもコロコロと性格を変える様は、見ていてとても複雑だ