「クズ鉄収集家始めてもう十数年になりますけどねぃ、まさかね、このクズ鉄が食料となる時が来るなんて俺ァ夢にも思ってませんでしたぜエプスの旦那」
「本当にナマエにはいつも世話になる。なにしろアイツ等、加減てもんを知らねぇのかってぐれぇに食っちまうからな…」
「いやいやいや、いいんですぜ?エプスの旦那 こちとらタンマリ儲けさせてもらってるんですがねぃ いやはや、まさかまさか、軍隊さんが俺っちのお得意さんになるたァ 人生何が起きるか分かりませんねぃ旦那ァ」
「その点に関しては全く同感だぜナマエ」
いつものニヤニヤ笑みを引っさげて目の前の光景をやはりニヤニヤと見物しているナマエの隣で話を聞いていたエプスは手に持っていた鉄骨をハンマーで2つに砕いて目の前の光景に投げ入れた。
カラン、と転がった鉄骨に群がる奴等は何処の捕食者達なのかと恐れ戦く。おーこわ
「それにしてもですぜエプスの旦那」
「なんだナマエ」
「もうこの光景見るのも十数回目ですがねぃ、いっくら見たって慣れませんや。色んな意味で」
「そうか 早く慣れろ。テメェにはこれから先もタップリ世話になる予定だからな」
「マジですかぃ」
目の前で、食事――原料となる鉄鋼を貪り体内に取り込み、様々な物質へと変換する大事な行動――をするオートボット達を薄ら寒い目で薄ら寒い笑みを浮かべてナマエは感慨深げに観察している。
自分が日がな一日うろついたり、とある筋から入手した鉄屑達にまさかこんな使い道があったとは
私用の電話に仕事の依頼があった時は疑わしかったが、実際にその光景を見たら信じざるを得ない。脅されるようにして印を押された『ココで見たことは他言しません誓約書』も本物だったという訳だ
≪おいナマエ!今日のは何かイマイチ後味が悪いぜ?≫
「そうですかィ 自分じゃぁ確認できねぇから知りませんでしたぜディーノさん」
≪そうか?いつも通り普通の味だと思うがな≫
≪師匠はいっつもそう言って何でもガツガツ食ってるだろ?≫
≪む…≫
「構わねぇですよアイアンハイドさん こっちとしちゃぁガツガツ食ってくれた方が設けもんですからねィ」
≪そうか≫
ディーノ、サイドスワイプ、アイアンハイド、他地上型のオートボット達はワイワイガヤガヤしながら沢山の量の鉄やスクラップされた鋼をバクバクと消化している。アレが彼等の武器になったり、身体の一部になったりするのかと考えたら何やらこの仕事についても感慨深いものがある
用意した商売品をこのディエゴガルシア基地にまで輸送するのをいつも手伝ってくれている航空部隊と輸送部隊の面々にお礼を言う
「ストラトスフィアさん、グイグイ行ってますかぃ?お味はどうでさァ」
≪ああ、ちゃんと摂取している。問題はない 今日もご苦労様だったなナマエ≫
「いやいや…ストラトスフィアさんが居てくれるからコッチも楽チンでねぃ」
≪オイオイ、ナマエ 俺達は必要じゃねぇって言うのかよ≫
≪そりゃ酷いぜナマエー≫
「エアレイドさん、シルバーボルトさん、そんなわきゃねぇでしょうが。頼りにしてますぜお二人とも」
≪だろー?≫
≪だろうとも!≫
「ヘヘヘ」
ナマエがいつものニヤニヤした笑みを引っ込めて子どものような愉快そうな笑顔を浮かべた。
エプスがナマエの肩を叩いて今日の分の報酬の話を持ち出す。軍の経理の者も一緒だった
「ありがとうございましたナマエさん」
「いえいえ、いつもご丁寧にどうも」
「では今度は2日後にまた」
「ヘイヘイ」
「ありがとなナマエ 送るぜ」
「いつもすみませんねぇ エプスの旦那」
封筒に入った金額を確認し、どっこらしょと腰を上げる。また2日後に向けて商品を調達しなければならないなぁとボンヤリ考える。そしてまた2日後に此処へ来るということも
ナマエが帰る空気を感じ取ったのか、食事をしていたオートボット達も見送りに駆けつける。毎回のことだったが、いつもいつも申し訳ない
≪またな ナマエ 2日後だったか?また行くからな≫
「へい、ストラトスフィアさん。お待ちしておりまさァ」
≪次はちゃんと美味いモン用意して来いよ≫
「へい、ディーノさん いまいち違いが俺には分かりやせんが努力しますぜ」
≪俺は何でも良いからな≫
≪師匠、いっつもじゃないか≫
「へい、分かりやしたアイアンハイドさん、サイドスワイプさん」
≪俺達も行くからな!≫
≪忘れんなよ≫
「へい、分かってますぜエアレイドさん、シルバーボルトさん」
最後まで賑やかにお見送りをしてくれたオートボットの面々に手を振りながら、エプスが用意してくれたジェットに上がりこむ。隣の席に乗り込んできたのは珍しいことにエプスだった
「おや、珍しいですねぃエプスの旦那が、だなんて」
「まあ偶にはいいだろ あいつ等、良い奴だろ?」
「ええ、そいつは一目見た時から思ってやしたから安心してくだせぇ」
「へへ、ソイツは良かった。これからもよろしくな」
「へい」
小さくなっていく基地を見下ろしながら、ナマエは窓の方を向き、誰にもバレないように優しい柔らかな笑みを零した