TF女主長編 | ナノ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
デコボコデコ


ナマエと言う女の子はいたく普通の恥ずかしがりやの女の子でした。しかしそれはあくまでも自己判断でしたので、周りから見たらその彼女の性格はけして"普通の恥ずかしがりや"ではなかったのです。赤面症、上がり症、口下手、過呼吸、対人恐怖症が一際酷い彼女は人間と言う存在が嫌いでした。願わくば今すぐ死んで生まれなおして人間ではないそれ以外の者になりたいと願うほどに。しかし家の中に引きこもってしまうのも彼女は嫌いでした。元来閉じこもっていたくない性格なのです。ですが出歩けば人間に出会います。彼女にとっては由々しき事態であり頭を悩ませる最大の原因の一つでした。それが今日、彼女は人生を変えてしまう出会いをしてしまいます。







「……ひっ!!、」

≪オ、オイ…お前大丈夫か?≫

「ロボっ、ロボ…ッ、ロボット…!?」

≪……………しまったな≫



人間の社会にある規則の一つである『信号標識は守りましょう』を守っていない女をたまたま目にしてしまったアイアンハイドは、赤信号なのに無視して渡ろうとしたナマエの前で停車し、一喝してから進もうと思っていたのだ。目の前の女が急に倒れさえしなければ



≪お前達が作ったルールだろう。それを人間が守らんくてどうするんだ≫

「………っ、……ひ、」

≪…?お……≫

「ひ、貧血と、…か…かこ、きゅっ…な、んで…気に、しな…っ」

≪・・・・≫



顔を真っ赤にさせて涙目になり苦しそうに胸元を押さえる女を見捨てて行ける程落魄れてはいない、とアイアンハイドは一人でに思い直し、女の身体を面倒くさそうにしながらも路地裏に押し込む。古ぼけたベンチに座らせ、周りを見渡す。人はいない



≪おい…本当に大丈夫か。何か飲むか≫

「あっ……」



コクコクと頷いた女を確認したアイアンハイドは≪よし≫と声を出して、自動販売機の前に立つ。その成り行きを苦しそうに見守っていたナマエは、次の瞬間の行動に目を丸くする。



≪………フンッ!!!≫



大きな掛け声を掛けてアイアンハイドは自動販売機を強く押した。亀裂が走り、エラーを起こした自動販売機の取り出し口から溢れるように缶ジュースや缶コーヒーやペットボトルの水が飛び出してくる。一通り出し切った自動販売機は大きな音を立てて後ろに倒れた。
「…!?」ナマエが目を丸くしていると、その内の何個かを拾い上げたアイアンハイドが戻ってくる



≪ほら 好きなモノを取れ≫

「……………、…」



呆然としながらもアイアンハイドの手にあった水を取る。アイアンハイドは満足したように頷いて、転倒していた自動販売機を立て直す。もう正常には稼動してはいなかったが



≪・・・・・≫



ナマエの目の前に立つ巨大なロボットはそれで何処かに行くのかと思えば其処から動こうとはしなかった。じっとナマエを見つめている。それが耐え切れなくて、言いたいことは沢山、たくさんあったが飲み込んで、真っ赤になる顔をロボットからパッと外した。



「・・・・・」

≪・・・・・≫

「・・・・・あ、りが」

≪…む?≫

「ありが、とう…ございました」

≪・・・ああ≫



何とか呼吸を調える。長らく人と(この場合は如何なるのか)対話をしていなかったから、上手くお礼を言えたかが心配だったが、それは杞憂に終わった。ロボットは頷いて返事をしてくれた。ナマエは分かりやすく顔を真っ赤にさせる




「あ、あの………」

≪何でお前は信号を無視しようとした?≫

「え?あ、…そ、その…考え事、してまし、て……その…」

≪……気をつけろ。命が幾らあっても足りんぞ≫

「は…は、い」



まさか、ロボットに命の尊さを説かれる日がくることも、人間の女に命の儚さを教える日が来ることも、双方予想もしていなかっただけにその会話の後も何故か気まずくなった。



≪それで≫

「…え?」

≪先刻、何かを言いかけただろう。俺が遮ってしまったソレをもう一度話せ≫

「え…あ、そ、その…… あの、貴方は…」

≪・・・≫

「…何処の会社の、目玉商品の方ですか?」

≪・・・・・は?≫



それから、アイアンハイドはナマエに"トランスフォーマー"と"オートボット"と言う単語を教えさせるのに脳内まで筋力で埋め尽くされている、とラチェットにからかわれるほどの知数をフル稼働させ何とか説明し、ナマエもアイアンハイドが言った言葉達をどうにか理解しようと努力していた。

普通の恥ずかしがりやであるナマエが誰かと一時間以上会話を続けることが出来たのは本人も気付いていないが快挙であり、軍の隊員達以外と1時間以上誰かの傍にいたことはアイアンハイドの快挙であり、恐ろしく凸凹な二つの存在をそれぞれ心配する者たちは双方の帰還の遅さを案じていた。