この状況を何らかの言葉で説明出来るとは到底思えない。
サイドウェイズは痛むスパークを掌で強く押さえながらそうごねる
毎日頭が痛いし、スパークもザワザワ痛い。あの日から色々痛い
あの日と言うのはサイドウェイズとデモリッシャーがオートボット達の捕虜に下されてしまった日のことだ
今は戦時中
捕虜と言う存在も珍しい話ではなかった
オートボットの捕虜と言う扱いがどのようなものかを知らなくはなかったが、
だがディセプティコンの多くの兵士は、己が負けを認めた時に自ら命を絶つ
サイドウェイズはその部類ではなかったが、デモリッシャーは違う
彼は生粋の兵士だった。負けという醜態を仲間にオメオメと晒すぐらいならば、オールスパークの源泉に返ることを望むだろう
しかしデモリッシャーはそうしなかった。理由は察せられる。きっと己と同じ理由だろうからな、とサイドウェイズは頭を振って、その理由の元凶である存在を強く睨む
≪……ナマエ!!≫
「あっサイドウェイズ!」
≪"あっサイドウェイズ"じゃない!お前は何をやってるんだよ≫
「何って、手伝い?」
≪………≫
開いた口を塞げられない。サイドウェイズとデモリッシャーの人生を大きく左右させっぱなしの全ての原因であるこの人間の女――ナマエは、呑気な顔に呑気な笑顔を浮かべ呑気に忙しなく動いている
≪お前な、自分の置かれてる立場分かってるのか?≫
「"ホリョ"でしょ?」
≪満足に発音も出来てないくせに何でそんな余裕綽々なんだよ≫
≪…ナマエは捕虜と言う扱いは、受けてはいないだろう≫
「あっ、デモリッシャー」
≪…だから、『あっ』じゃねーよ≫
倉庫の外からいつの間に来ていたのか、デモリッシャーが身を屈めながら入り口を潜っているところだった
ディセプティコン達の中でもかなり大型のデモリッシャーは、基地の中でも窮屈そうにしている。
捕虜にされた際に、デモリッシャーとサイドウェイズはコグを抜き取られ、トランスフォームは出来なくなってしまっていた為に、日夜ロボットモードのままで過ごさなければならず、その勝手の悪さにデモリッシャーはいつもより数段機嫌が悪い
サイドウェイズもじれったそうだ
≪俺たちは処遇受けるのは当然だけどよ、ナマエは人間達の手伝いさせられてるっておかしくないか?≫
「うーん…私もそう思う。でも言われちゃったし、お手伝いしないと家族の下に送り返すって言われちゃったから」
≪送り返してもらえよ…≫
サイドウェイズが拗ねたようにそう言うのをデモリッシャーは内心でクツクツと笑いながら見下ろす
いつもナマエを人間達の許に返してやろう、と提案するのはサイドウェイズなのに、その本人がそんな顔をしていてはいけないだろう
ナマエも分かっているのか、そんなサイドウェイズを見てニコリと笑った
「もうちょっと2人と居たいの」
≪…ナマエの"もうちょっと"は、かれこれ半年以上続いているようだな?≫
「人間とトランスフォーマーの時間間隔は違うんでしょ?だから気にしちゃダメよ」
≪フンッ、勝手にしろよ≫
「うんっ勝手に傍にいるね」
≪……バーカ≫
バカって何よ!うるせー、とまた喧嘩を始めたナマエとサイドウェイズ2人の間に拳を振り下ろし、力技で喧嘩を仲裁したデモリッシャーが床に大きな亀裂を作ったことをオートボット達に発見され、ナマエがペコペコと謝っていたのは少し先の展開