思念体だから疲れないのでしょうか、何も苦なく我が家へと帰れてしまいました
私達の家はこんな様子だったでしょうか、
私が最期に見たこの家は、もう少し明るい色をしていたような
やはり家も、持ち主を失くすと色を失ってしまうのですね
悪い事をしてしまいました
「……ふぅ…」
疲れているはずもないのに、自然と溜息が零れる
でも息を吐き出せた感じがしません。しかし喉の奥には溜息がつっかえているような、そんなものなのでしょうか、
もう辺りも暗い。昔はこの辺りも暗くなったら治安が悪く、外出は控えていたのだけれど
今この姿なら何も恐れることはありませんね。
だって誰も私に気がつかないんですもの
家路へと急いでいる女性の方が真っ直ぐ、ブレずに私の方へと歩いてきます。
そして私の身体を通り抜け、忙しなく去っていきました。次に来た学生さんたちも同じように
「すり抜けられるのも、何だか妙な気分ねぇ…」
だって、私自身は、ここに私がいると分かっているのに
家に来たのはいいけれど、感傷に浸っただけになってしまった
サイドスワイプの姿も、ない。ひどく哀しい気持ちになった
そうよ、彼は、基地にいるんだわ。きっとそう、
だからこの家で待っていたってしょうがないのに、
暗く落ち込んだ気持ちになり、なにやら疲れが出てきました。
腰をゆっくりと折り曲げながら、玄関先にしゃがみ込みます。
こんな姿をしてるけれど、痛む腰は変わらず仕舞い
ぼぅっと、流れる車のライトや人の姿を見送る。お隣さん家は真っ暗だけど、お向かいの家には明かりがつきました。きっとこれから家族で夕食の時間かしら
「……サイドスワイプ…」
いやぁね、すっごく恋しい
そう呟いた瞬間、私の家の前に一台の車が停車した。
「…… ぇ…」
それは、見間違うことなく、彼その方だったのです