TF女主長編 | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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楽になれない



ディーノは、また想い人に巡り合えたのだ
何年の間もその想い人のことを忘れられず、何かを確かめ確認する為に毎日のように墓に足を運んでいたアイツの姿を思い出す。
あの頃は、俺はその背中を何も考えず何も言わずに送り出してやる役目を受け持っていたと思っている
墓に行って帰ってきた後のディーノとの会話に気を遣ったことなどない
自然と、その手の話をブレインが避けてきたのだ
「辛いだろう」「大丈夫か」なんて訊かない
「また行ってたのか」「墓に変わりはなかったか」「そうか」繰り返す相槌はこれに限られていたし、
例え俺がこの言葉以外のことをディーノに投げかけても、アイツは答えなかっただろう

いつも暗い顔をしていた、とまでは言わないが、
アイツ独特のニヒルな笑みを浮かべ仲間達と談笑する、と言うのが無くなっていた

「たかが人間1人ぐらいのことで、」とディーノに言った奴がいた、その時ディーノは激しく激昂した。大きな感情を出したのはあの時ぐらいのものだった




そんなディーノが、あの日俺の許へ走りこんできた。しかも、あのディーノ独特の笑顔を浮かべて




≪サイドスワイプ――!アイツが、アイツが俺の許に戻ってきやがった…!≫



最初は意味が分からなかったが、話を聞き状況を知ってくるとなるほど
隊員と一緒にいる姿を盗み見したディーノの言っていた"アイツ"なる人物――少年は、確かにどことなく生前のあの人物の姿を彷彿とさせた

良かったな、とは言わなかった。そもそもディーノが俺の許にいの一番に駆け込んできた理由も、俺ならば何も言わずとも言葉を受け止めてくれると思ってくれたからだろう。その通りだったから俺は一言「そうか」とだけ返した。ディーノも「あぁ」と声を弾ませてそう返事しただけだった



もうこれも昔の話になる。ディーノは今もあの男と共に居れて幸せそうだ




≪……なぁディーノ≫



俺は誰に言うでもなくポツリとこぼす



≪何年待てば、俺の許にもナマエは帰ってくる?≫




答えなどあるわけがなかった