決して華やかな人生ではなかった。
それでも走馬灯が駆け巡るには充分すぎる量の出来事があったこの人生で、
頭を、そして心を埋め尽くした存在はたった一つ。
目を閉じても思い出せる、眩しいぐらいの銀色だ
狭まってしまっていた視界も、今は暗く真っ黒な色が覆うだけ
私の目は最早目として機能してはいない
それどころか手も、指さえも、一片も動かすことは出来ない
当たり前だ、私はもう死んでしまった
≪……ナマエ、≫
あぁ、そんなに哀しい声を出さないで。私は、貴方の芯強くぶれぬ声が好きなのだから
≪ナマエ≫
どうか そのまま私の名前を呼び続けてほしい。
死者は生者の呼ぶ声に未練を感じ動けなくなるらしいが、
私はあなたのその声を門出の合図にしたい。
ねぇそのまま、お願い。とても心地好いの、あなたの声
≪…… …ナマエ…っ!!、う、ぁ、ああぁあああぁあっ…!!≫
彼の慟哭が鳴り響いて、私はそこで、 とまった