TF女主長編 | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「ただいま〜」

「お帰りー」



庭先で掃除をしていたお母さんが顔を上げて出迎えてくれた
持っていたホースを片付け、ゴミを袋に纏めていたので手を貸す



「今日の発表は上手く出来た?」

「うん。Aもらったよ」

「そう!お父さんのあれ、役に立った?」

「うーん、どうかなー」



バッグに入れていた双眼鏡を取り出す。別段役に立ったというわけでもない
発表の内容はぼほ父の武勇伝だ。そこで父と一緒に色んなものを見てきたこの双眼鏡もついでのように紹介したが、効果の程は定かではない



「あなた、またすぐに出かけるんでしょ?」

「うん、湖の傍でパーティだって」

「楽しそうね」

「そう?」


正直言ってめんどくさくてたまらない。サムのように気になる人もいないし、
言ったって友人達は男達の気を引くためにそちらへ流れて行くはずだ。それに付き合う義理もない、だが行くと言ってしまった以上は行かなくてはならない



「お母さん、私がゴミ捨ててくるよ」

「ありがと〜」



母から受け取ったゴミ袋を両手に引っさげて家の反対側のステーションに運ぶ
昼下がり、少し空に陰りが見えてきたこの時間帯が一番好きだったりする

家に入り、パーティに行く用意をする。行きは母が送ってくれるらしいが、帰りの目処は立っていない。歩いて帰れない距離ではないので大丈夫だろう

母が出かける準備に追われている間、二階の自分の部屋の窓から遠く地平線を拝む
太陽の光がキラキラと向こうの町並みを照らしているのが綺麗だ
バッグから何とはなしに父の双眼鏡を取り出し、顔を近づける
より一層近く見えるようになった町の風景に思わず嘆息する
発表会のために、母と一緒に倉庫から探し出した奴だったが、もう少し早めにあの埃くさい倉庫から助け出してあげれば良かったな



「…あれ…?」



いきなり双眼鏡のレンズが黒い影を落とした。カバーが降りたかな?と思い目を放すが、カバーは降りていない
服の裾で擦ってみたが汚れが付着した、と言うわけでもなさそうだ
もう一度レンズを覗く。普通に風景を映していた


「…なに?」



「ナマエー、出発するわよー!早くしなさーい!」


「あ、はーい!」



母の催促の言葉に慌てて双眼鏡もバッグに突っ込んだ。パーティには到底必要ではないのだが




ナマエのバッグの中で、双眼鏡はカタカタと揺れた
そして先ほどまで自分が映していた町の風景の映像を保存する
ナマエ達が湖に到着する間まで、双眼鏡はその映像をモニター画面に映して鑑賞していた







あれ、双眼鏡持ってきちゃってた…まぁいっか