最近、ゴッドマグナス君に馴れ馴れしくしすぎたかな
ユウキ君やマッハアラート達が、「ゴッドマグナスって本当は優しくていい人だよ!」と言うことを言っていたし、
出来るなら私も仲良くなりたいなぁと思って声をかけていたけど、向こうの迷惑は手に取るように分かっていて少しやりすぎたかな、とは思う
素っ気ない態度を取られるけれど、私は確信している。
ゴッドマグナス君は、間違いなくいい人だ
自宅の明かりが見えてきた頃、
そんな考え事をしていた私の影と重なるようにして伸びているもう1つの影に気付く
「……え…」
夜なのに、目深に被られた真っ黒な帽子
風邪気味なのか顔全体を覆うマスク
顔部分で唯一見える、ギラギラとした不気味な目が真っ直ぐに睨んで来た
長身で、上背のある細い男、
「………!!」
友人から聞いた、"不審者の男"の特徴と一致したその男が勢いよく向かってきた
その手には、月の光を受けて煌いているナイフらしきものが
条件反射のように身体が強張る
「……ひっ、きゃ、あああああぁあああぁあ!!!」
叫び声を上げるのが精一杯だ
手に持っていた鞄を力強く握り締め、目を瞑る
男が地面を蹴る音が嫌に響いたこの空間に、聞こえてきたもう1つの声
≪ナマエ!!!≫
男と私の間に大きな爆発が起きる
ようよう振り向いたその先には、トランスフォームしながら駆けて来る大きな身体
「―――ゴッドマグナス君!!」
「!?」
男の身体が後ろへと蹌めく。持っていたナイフがカランと音を立てて地面に落ちる
私の後ろから現れたゴッドマグナス君の顔は、
見たこともない程に怒りに染まっていた
そして、逃げ出そうとした男の後ろから
サイレンを鳴らしながら何台ものパトカーが回り込んできた
≪この…通り魔め!お前を逮捕する!!≫
「ま、マッハアラート!」
≪ナマエちゃん、無事か!?≫
「う、うん!ありがとう!」
パトカーから降りてきた警官の方々が一斉に男を取り囲む
私にはこの一連の流れが全部現実味がなくて呆然とするだけだったけど、
震えていた身体をゴッドマグナス君に掴まれる
≪……お前の悲鳴、煩すぎだぜ≫
「…ご、ごめんね…」
≪……大体、マッハアラートの方に先に言うってどういう事だ≫
「な、何を?」
≪……フン!!≫
「わっ!」
ゴッドマグナス君に放り投げられた身体をマッハアラートに受け止められた
一気に騒がしくなった夜の住宅街に、ぞろぞろと見物人が集まる
連行されている男が、苦々しげに、でも未だに信じられないようなものを見る目でゴッドマグナス君の方を見ていたのが見えた
≪…とりあえず、犯人も捕まったし、ナマエちゃんも無事で良かったよ≫
「…そうだね、何か、まだ夢見てるみたい…」
≪ふん、しっかりしろよチンチクリン≫
「………チンチクリンだけど、狙われたよ?」
≪どんくさい顔してるから狙われたんだろ、どうせ≫
手に持っていたマグナバルカンを仕舞い、ゴッドマグナス君が踵を返した
慌ててその背中に追い縋る
「ま、待って!ゴッドマグナス君!」
≪…何だ≫
「駆けつけてくれて、ありがとうっ!」
≪………≫
「……?」
ポカンと口を開けたままのゴッドマグナス君の顔が、見る見るうちに赤く染まった
≪う、うるせえっ!!≫
「えぇっ!?」
≪ゴッドマグナス、お前の方が煩いぞ≫
≪黙れ!!とっとと家に入れよ!マッハアラートも帰れ!≫
「う、うん 本当にありがとう、ゴッドマグナス君!」
≪だ…っ!?≫
騒ぎを聞きつけたお母さんが見えたので、2人に手を振って家へ入った
ゴッドマグナス君はまだ後ろで何か言っていた
「あっ、ゴッドマグナス君!」
≪……またお前か≫
「乗せてってくださーい」
≪煩い奴だな…静かにしてるんだぞ≫
「うん!」
君の声が
僕の機械の耳の奥で
何度も残響を繰り返すから、