TF女主長編 | ナノ
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プロローグ




「…あ」

《…お》



ばったり。

って表現が正しく正しい。曲がり角を資料を見ながら曲がったらガン!と金属にぶち当たったから何だ?と思って見上げたらスタースクリームの足だった
え、何で此処にいるの?アレクサやラッド達ならコンボイ達と一緒に出かけてるよ
今この基地には私しかいないよ?



「……アレクサなら出かけてるよ」

《…開口一番に何でアイツの名前を出すんだ》

「え…だって、貴方が用があるのってアレクサ目当てじゃないの?」

《ち、違う!》



ほら、慌ててるじゃないか。何なんだもう。付き合ってられんスタースクリームなんかに
見上げていた視線を手元の資料に移して「じゃ」と声をかけて立ち去ろうとしたら思いっきり掴まれた。痛い



「…痛いんですが」

《俺の話を聞け》

「聞きました。アレクサならいません。はい、降ろして下さい」

《だから!アレクサに用はねぇって言ってんだろうが!》

「…………では何故私を捕まえるんですか。忙しいんですよ?私。皆と違って私からだが弱いからインドアな係を任されてるの知ってるでしょう?」

《……ああ》

「だから今あなたに掴まれてること事態だって、絶対に身体のあらゆる気管に損傷を与えてるんですよ。離して下さい。私死にます」

《それならここにいろ》

「きゃっ…!」



さっきより目線が高くなって、床が遠くなった。
当たり前だ。スタースクリームの肩は冷たくてそれだけで体温が低下していくのが感じ取れた。やっぱりこの人は私にマイナスしか与えない
そしたら何か温かくなってきた。スタースクリームが体温を上げたらしい。なんだその感じ。理解出来ない




「……なんのつもりですか。私に人質としての価値なんかありませんよ」

《するつもりなどない》

「じゃあ降ろして下さい」

《断る》



言っても聞かないようだこのスタースクリームは
諦めて彼の顔の部分に背中を預けて資料に目を戻す
スタースクリームが歩くたびに、小さな振動が来て、それはいつしか私の眠気を誘ってくれた。寝そうだ



《オイ》

「………もうちょっとで夢の世界だったのに」

《俺の肩で勝手に夢の世界に行くんじゃねぇ》

「……何でモニタールームに?」

《行きたかったんじゃないのか?》

「……まあ、貴方と出会うまでは目的地でしたけど」

《ならいいだろ》

「はぁ……」



床に降ろして貰うとさっきの睡魔もどこかに消えてしまった
結局私をモニタールームに連れてきて、スタースクリーム自体は何がしたかったんだ



「……それでスタースクリームの用事って何なんですか?」

《ナマエに会いに来ることだ》

「は?」



なんて言ったこの金属生命体は



《この前此処を訪れたときはお前が居なかった》

「…あの時は入院してまして…」

《手術受けてたらしいな》

「はい」

《心配した》

「……………それは、どうも」



一体全体なんだこの展開と会話の内容は
あのスタースクリームから、「心配した」だって?
私の頭にウイルスでも入ったんだろうか。ああやっと復帰したばかりなのに



《あの時はお前に会えなかったから、今日なら会えるかと思ってな》

「…それでわざわざ」

《ああ。会えて良かった、ナマエ》

「………スタースクリーム、貴方にもウイルスか何かが侵入したんですか?」

《入ってない!!》



だってオカシイ。本当にこれはスタースクリームか?怪しい。すごく怪しい。別人じゃないのか?



「………アレクサ、たちは、どうするんですか」



我ながら変な質問だ



《…あのな。お前等は誤解してるようだが、俺はアイツ等とお前とで、"想い"の種類が違う》

「・・・・・・・・うそだぁ」

《嘘じゃねぇ》



だって私は全然あなたと面識がない。いや、全然ないとは言い過ぎたけど、
顔を合わせても私はすぐに自室かモニタールームに引っ込む。
皆に風邪をうつすわけにもいかないから、大概一人でいることが多い(皆は心配して近くに来てくれるが)
スタースクリームと出会っても、「…あ」《…よお》ぐらいしか交わさないし、いや、それもちょっと言い過ぎた。もうちょっと会話もする


戦場とか他の場所でばったりデストロンの人たちに襲われたときも何故かいつの間にか近くにいて《こんな所にいるな》と言って私を安全な場所に置いて去って行くし、

私が前に血を吐いてモニタールームで倒れていて生死の境を彷徨っていたら、何か妙に焦った感じで息も絶え絶えな私から"病院"の場所を聞き出してマッハで連れて行ってくれたし、それから一回だけ見舞いにも来てくれた(その時は時間がなかったらしく、私の顔を見て《良し》だけ言って去っていったっけ)

アレクサ達と話をしている姿を見かけて、声をかけようか悩んで結局かけずに去ろうとした私に《おい、何故無視して去ろうとするんだ》って言って絡んできたし

一度だけ、一度だけ、スタースクリームと一緒に星を見たことがある。っていうかそれは、私が一人で丘に腰掛けて星空を眺めてたら後ろから《夜に一人になるな》とか言いながら大きな身体を隣に座らせて来て、それから暫く無言で星空を眺めた。あの時に二人で見た星空の光景は何故かよく覚えていた。なぜだろう



薄々感づいてはいたが、スタースクリームはよく私の近くに、いる、な。



「…私なんて、やめといた方がいいよ。病弱だし、よく死に掛けるし、戦えないし、身体丈夫じゃないし、卑屈だし、気遣いもないし、貴方に大事なことなんて何一つ教えられないし、」



最後のは言ってて自分で思った。(なんだこのアレクサへの当て付けみたいな、嫉妬みたいな、卑屈すぎる感情は)



《……卑屈すぎだろ》

「本当のことだもの」

《お前は俺が知ってる限りでは、気が強いし、危険な場所にでも省みずに着いて行ってるし、精一杯役に立とうと頑張ってるし、努力家だし、病気とやらにも負けてないし、俺に大事なことを教えてくれた》

「……なにを?」

《"ずっと傍にいて護りたい"って感情だな》




スタースクリームって



「もっとクールなのかと思ってた」

《おい、それが返事かよ》