ボロボロになったサムが身体を引き摺りながら、高地から私達を見下ろしている謎の――ロボットに一歩一歩近付く。おっかなびっくり、「ちょっと、やめなさいよ!今ロボット同士のデスマッチ見たばっかりじゃない」と、普段の強気な態度からは想像しにくい及び腰なミカエラがサムに言葉をぶつけつつ、引っ付いて近寄って行く。私も肩に乗ってきたロングビューと一緒に後ろから付いていく。近くで見れば見るほど大きい。ロングビューの何十倍もあるし、私達の何倍もありそう
「…きみ、話せる?」
≪"こちらはXMサテライトラジオ放送です―……お送りいたします…―"≫
「ラジオで喋るの…?」
ロボットから聞こえたノイズ混じりのラジオの音声に驚いていると、肩のロングビューがポツリと零した
≪…バンブルビー、やっぱりあの時…≫
「あの時?」
問い返そうとした言葉は、バンブルビーと呼ばれるロボットの≪天からの訪問者、ハレルヤ――!!≫という音声にかき消されてしまった
「天からって…あなた、エイリアンなの?」
≪"That's right!"≫
パチンと器用に指を鳴らして見せたロボットは、そのまま腕を地面につけながらまた元の?サムのカマロの姿に変わってしまった
そして私達の方に向けてドアを開く、それはまるで
「…乗れって言ってる」
「私もそんな気がする…」
「ちょ…ちょっと待って二人とも、乗るってどこへ?」
「分からない。でも考えてみなよ。今から五十年後に、『あの時乗っておけば、』って、後悔とかしたくないだろ?」
もうサムの顔にはさっきまでの不安はなかった。
ワクワクしている。さすが男の子、好奇心に恐怖は勝てない
サムの表情に呆れ返ったミカエラの背中を押す
「行こっミカエラ、こんな体験滅多にできないよ」
「ナマエ…あなたもサムと同類なのね。そっちの小さなロボット君もかしら?」
≪俺はナマエに付いていくぜ≫
「あら、こっちは従順なの」
そう言ってミカエラは落ちていた自分のハンドバッグを拾い上げ、
もうすでに助手席に座っていたサムの後ろのシートに座った。
私もミカエラの隣に腰を落ち着ける。カマロはまた独りでに動き出した