今日は特に惑星の影響もエネルゴンが見つかったという報告もない。至って普通の、珍しい平和な一日だった。
訓練を付ける必要のある奴もいないし、総司令官からの命令もない。
待機しているだけも詰まらないから、久しぶりに大空を爆走するか!
そうと決まれば早速、キッカーの例の我侭のせいで浮上していたサイバトロンシティの外に出る。今日も空は真っ青だ
≪…いー…天気だなー…≫
「本当だね!」
≪……ん!?≫
独り言を聞かれてしまった。誰にだ?足元に居たのはナマエだった。寄りにも寄ってナマエか!恥ずかしいところ見られちまった
ニコリと微笑んだのはキッカー達と同級生の補修員のナマエだった。ちっさい身体の割りに、タワーやシティの建設を受け持つ力持ちな女だ。常時ツナギ服姿がポイントで、今は片手に工具箱を持っている。と言うことは、これから仕事だろうか?
「スカイファイヤー、今からお空のお散歩に行くの?」
≪おうよ。たまには良いかと思ってな≫
「そっか〜」
ミーシャよりは子どもっぽく、サリーよりかは少しだけお姉さんなナマエの喋り方は何と言うかホニャ〜としてて全身の力が抜けて行く。もちろん良い意味で
≪ナマエも一緒にどうだ?≫
「うーん…すっごく行きたいんだけど、アタシこれから東ブロックAエリアのタワーの補修に行かなくちゃいけなくて」
≪ああ…この間、エネルゴンが気化して爆発したところか≫
「そう。でも大丈夫!皆と協力して、1日で終わらせるから!」
≪頼もしいねー!でもな、無茶だけはすんなよ?≫
「分かってる!」
工具箱を持ち直したナマエが笑いながら俺の手に触れる。
≪何だ?≫
「指きりしよっか!」
≪指きり?どうしてだ?≫
「アタシが無茶しないように、って」
≪ハハハッ!なんだ、それ≫
「いいから!ほら、スカイファイヤーも指出して」
≪ほらよ≫
俺の硬く白い大きな指にナマエが小指をそっと添える。ナマエ達人間に通っている人肌の温かさ、と言うものがじんわりと伝わってきた。気恥ずかしくてナマエと共にさっさと口走る
≪お、オラ 指きりげんまん!≫
「うっそ吐いたらはりせんぼんのーますっ」
≪指、せっつだん!≫
「違うよスカイファイヤー。指切った!だよ」
≪あれ?≫
…違ったか?たまに間違ったことを知識として覚えてしまうからいけねぇな
「じゃあね、スカイファイヤー。また今度!」
≪おう!ナマエも頑張れよ。遊泳が終わったら、お前んとこに顔出してもいいか?≫
「もちろん!待ってるからね」
小さいながらもこの町の為に奮闘しているナマエが眩しくて笑う。
しかし、俺はフェイスマスクを付けているはずなのに、ナマエが照れながら指摘してきた
「あ、スカイファイヤー 今笑ったでしょ?」
≪な…何で分かったんだ?≫
「スカイファイヤーのことなら、雰囲気で分かるよ」
≪…!≫
「じゃあねっ」
≪あ…≫
呼び止める間もなく、ナマエは正面ハッチの中に駆け込んで行った。
ナマエの姿が見えなくなってから、トランスフォームし、青空に向かって飛び立つ。
目的地もないし、時間も決めていないが、自由に飛んで、ナマエのことを思い出していたら直ぐに時間は経つものだ
先ほどの指きりを思い出す。今日は、ナマエから俺に触れて来てくれた。それだけで心は面白いぐらいにハイテンション
≪・・・ィィイヤッホゥーー!!!≫
何だか何処へでも飛んで行けそうな気分だ!!