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君の言葉の裏に優しさを見出す




スタースクリームの顔には明らかに呆れと困惑が見えていた。そんな顔にさせたのは私。私が言った言葉にスタースクリームは顔を顰めているのだ



「だから、行かないでよスタースクリーム」

≪……だから先ほどからお前のその質問に私は『何故だ』と返しているだろうが≫

「………スタースクリームが、死んじゃうような、気がするの」

≪………想像に容易い。私は、死ぬ気であの方をお止めする為に行くんだ。そんなことでは、決心は揺らがないぞ≫


私を肩に乗せたまま、私から目を逸らさないスタースクリーム
その目には見て分かるほどに強い意思が刻み込まれていた



「……私が、行かないで、と言っても…?」

≪・・・・・・・・・・・≫

「…そう、」



昨日の夜にふと過ぎったのだ
漠然とした彼の死、という事実
激しく揺さぶられるほどの恐怖、
大切な何かを失ってしまうかもしれない喪失感



その対象の真ん中にいたのは、コンボイ司令官でも敵方のメガトロンでもなく、
まさしく丁度、大切で愛しい存在の 彼だったのだ






「……っ、駄目!」

≪…ナマエ?≫

「ダメ!やっぱり行っちゃ、駄目!!だめ!」

≪ナマエ……≫



駄々をこねてスタースクリームの肩にしがみ付く。我侭なのは分かっている。きっとスタースクリームにも面倒くさい奴だと思われているのも分かる。だが駄目だ。これだけは絶対に妥協してはいけない、だって



「スター、スクリ、ームが…、死んじゃうのは、っ、いやだよぉ…っ!」



≪………≫




怖くてスタースクリームの顔が見えない。せっかく、彼の一番近しい人間の存在になれたかもしれないのに、最後の最後で愛想が尽かされてしまったかもしれない
でも涙は止められない。行って欲しくない、漠然とした未来への恐怖が、だんだん自分の中で現実味を帯びてくる。スタースクリームは、きっと、 死ぬ




≪…ナマエ、顔を上げろ≫

「嫌だっ…、やだっ…」

≪お前の顔が見たい。顔を上げろ≫

「・・・・」



再三促されて、渋々顔を上げる。涙を手で乱暴に拭ったら、スタースクリームの手に阻まれた。



≪やめろ、傷つくだろう≫

「……別に、いいんだよこれぐらい」

≪…ナマエ、≫

「…?」



スタースクリームの声色が若干低くなる。これは、彼が真面目に話しを切り出そうとするときの癖のようなものだった



≪…私は、恐らく、ナマエの想像通りに消えてしまうかもしれない≫

「…っ!、い、」

≪まあ聞け。だがな、ナマエ、私はそれでも構わないんだ≫

「どっ、どうして!?自分が消えて、死んじゃうかもしれないんだよ!なんでそれを、貴方は気にしないの!?どうしてっ、どうして私ばっかりが心配して…!」

≪ナマエの住む星を護れるのなら、私はどうなったっていいんだ≫

「っあ、!」



驚きすぎて変な声を出してしまった
スタースクリームは、依然として強い眼差しで私を見つめていた



「やだよ…星が護られたって、貴方がいないんじゃ私は…」

≪忘れろ。私のことは、忘れて生きるんだナマエ≫

「無理だよぉっ…!こんな、こんなに、私の胸に居座り続けてるのは、どこの誰だと思って…っ!」

≪…私のことを、それだけ想っていてくれていたと分かっただけ、それだけで私はお前の全てを護ることが出来ると想っている≫

「ぅ、スター、スクリィ、ムぅっ!」

≪…ナマエ…………愛している≫

「私の方が、絶対愛してるもん…!」







私はそれからいつの間にか気を失っていて、
気づいたらラッドたちと同じ船の中の寝台に居た。
焦ってラッドに話を聞いたら、船首で横になって眠っていたらしい。涙の後があって心配した、と言われた

そして何故か私は、何かの機体の破片を手に握り締めていたらしい。
それはよく見ると、スタースクリームの翼の表面だった。ちょうど、デストロンエンブレムのマークの部分だったようで、青色のそれに暗紫色のマークの一部が見えていた。
微かだが記憶が在った。スタースクリームから離れられなかった私に、スタースクリームが、私がたまたま手を添えていたそのパーツの部分の欠片を渡してくれたのだ。
≪私の代わりになるわけではないが、これをナマエに持っていてほしい≫と言って。

それから私の記憶はないわけだが、船の船首に寝かされていたということは、恐らくスタースクリームが私をそこまで運んでくれたのだろう。

スタースクリームは行ってしまったのだ




















業者にお願いするのも不安で、自分で一から全てを加工し作り上げたペンダントが揺れる。スタースクリームが持って来てくれた火星の石の真ん中に、以前同じくスタースクリームから渡された機体の破片を埋め込んだ。それの意味を知っている人から見たら、それは狂気的とも言えるかもしれない。しかしこのペンダントの内情がどうなっているのかを知っている人間は私以外にはいない。だから誰も私が狂気的だなんて知る由もない。



彼が護ってくれたこの地球の為になる仕事がしたくて、カルロスと同じく宇宙飛行士を志願した。カルロスとは違う別の衛星基地で働いている。
ふと想う。この宇宙の何処かで、彼がまだ生きていたら、どうしようと。
その時は、きっと私は彼を探しに出て行くだろう。彼を独りには出来ない。私が独りになれないように







『……―――緊急警報・緊急警報   謎のトランスフォーマーが此方へ接近中 乗組員は直ちに衝撃に備え…―  ―  繰り返す…―』




画面にはエマージェンシーコール画面が表示される。隣にいた乗組員の仲間は、慌てた様子でデッキに走っていった。私も逃げなければ、しかしその前にデータが奪われないように画面をシャットダウンする必要がある。宇宙服のマスクを外し、放した視線をもう一度モニターに映す。宇宙の様子を絶え間なく表示していたモニターに、接近してきたトランスフォーマーの姿が小さく映し出される。その姿に、見覚えがあった。まさか、だんだんソレは此方に向かって来る。姿が大きくなる。まさか、まさか、 まさか




そのトランスフォーマーは勢いよく宇宙船に突っ込んできた。側面に大きな突入穴を開け、船は大きく左右に揺れる。


「きゃっ…!」


立っていられなくて、床に打ちつけられる。宇宙服を着ていなければ確実に肺を圧迫されて動けなくなっていたに違いない。モニタールームの向こうから、此方へ向かって何かが近付く音がする。
ガシャン、ガシャン、そして逃げる皆の悲鳴、爆発音。大惨事なのは明白だ
しかし何だ。この胸を高鳴らせるこの高揚感は
私は知っているのかもしれない。いや、私の心はもうその近付いてくる存在の答えを出しているのかもしれない



モニタールームのドアが乱暴に壊され、そのトランスフォーマーは持っていた剣を一払いし、そして、私を、見た







≪………  ナマエ   ≫






ああ、嘘だ、冗談だろう。それでなければきっと悪い夢だ




また私の前に、スタースクリームが立っているなんて、そんなの、





≪…探した。   来い≫




しかし、目の前の彼が私にそう言って差し出した手は、夢ではありえないくらいにリアルだった




きっと私が彼のその手に掴まり起き上がるのも、夢の中でも現実でも、同じ行動だったに違いない