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左手の薬指だけは大事にとっておいてね





≪ナマエ、そろそろ「行ってらっしゃい」って言ってくれないか…?≫

「も、もう少し待って…!」

≪なぜ?≫

「笑顔で、あなたを送り出したいの…だ、だから、もうちょっとで泣き止むから…っ!」



そう言って、ナマエはまた止め処無く溢れ続ける自身の涙を拭った
さっきからこの問答の繰り返し。仲間達はぞくぞくと船に乗り込んで行く
ナマエとの別れ際を満喫しようとしていると、サイドスが脇を通り過ぎていき、「充分に別れの契りを交わしておくのじゃぞ」と言って船に乗り込んでいった。
自分も続かねばならないのだが、それをナマエとその涙が引き止める



≪ナマエ…≫

「うっ、ぅ…ライブ、コンボイィ…」



見かねてナマエの顔に指を這わす
この地球人の少女は、昔と何ら変わりのない泣き顔を僕に見せてくれる
あの時、ナマエを野犬の群れから助けたときも、その顔を涙で濡らしていたのを思い出す
あれから十何年、彼女は美しくなった



≪…あの時も、そうやって泣いていたな≫

「…わたし、泣いてライブコンボイを困らせてばっかり…」

≪困ったことなんてあるものか≫


這わせた指に縋り付くナマエが愛しくて抱きしめる
こんなにも、別れが辛いことだなんて
だが、ナマエまで自分と同じように不安にさせたままではいけない
愛を誓い合った存在だ。出来ることなら共に連れて行きたいが、そう言うわけにはいかない


不安がっているナマエを元気付けるように、努めて力強い声を出す



≪大丈夫だ 僕は地球を護る守護神ライブコンボイ 必ず地球に…ナマエの居る此処に帰ってくる≫

「ライブコンボイ…」


ナマエの顔に少し笑顔が戻った
ナマエの左手を優しく取って持ち上げ、にやりと笑う


≪だからそれまで、ナマエの薬指は僕が買収して予約済み、だと言うことを忘れないでくれよ?≫

「っ、―も、もちろん!!」

≪いい子だ≫



しゃがみ込んで、ナマエの頬に優しくキスを落とす
しかし直ぐに後悔した。たった一度のキスのせいで、ナマエと離れがたくなってしまった
だがそれを押し殺して首を振る。ちょっとの間の、別れだ。決して今生の別れになどさせない



≪―それじゃあ、そろそろ出発しないと≫

「あっ…」

≪そのまま、いい子にしているんだぞ?他の男にホイホイ付いていかないように≫

「…ははっ、ライブコンボイったら…最後の最後までその台詞?」

≪しょうがないだろう?可愛いかわいいナマエを一人地球に残してかなくちゃならないからな≫

「一人じゃない ローリもバドもコビーも…皆がいるから大丈夫」

≪そう信じてるよ≫

「…ずっと 貴方のこと、待っていてもいい?」

≪僕もその方が嬉しい。いつか必ず、君を迎えに来る≫

「うんっ」


乗船口の前で、サイドスが手を振って催促していた。
重い腰を上げて立ち上がり、ナマエを見下ろす
彼女は笑っていた。もう泣いていない



じゃあな、ナマエ また

…うん、ライブコンボイ またね