・夢主を通した只の考察のような語りと前日譚
私がベクタープライムさんと出会ったのはホップ達と一緒に宇宙空間に投げ出されたところを救出して貰った時からだから、短くもなく長くもない時間を共に過ごさせて貰っている。ホップ達と読んだギガロニアの古いデータ書物でしか読んだことのなかった、御伽噺と同列の類としか思っていなかったプライマスの存在、そしてベクタープライムさんを初めとした、最初の13人のトランスフォーマー達の存在。ベクタープライムさんを信頼していなかったら、到底信じられる話ではなかった話だ。
旅の途中で、何度も何度もベクタープライムさんはその話を私達に話し聞かせてくれた。
まるで子守唄のように、
ある惑星での戦いを見てスパークが昂ぶってしまった時に、宥めてくれるようにして聞かせてくれた
ベクタープライムさんの声は、聴覚センサーに心地好く響き渡る
ホップやバンパー、ブリット、ルーツ君もそう思っていたらしい
時が経って夜と呼ばれる時間になると5人でベクタープライムさんの傍に集まり、
微弱ながらもベクタープライムさんを護るように固まって眠りに付いたこともある
ベクタープライムさんはよく、所有しているベクターソードを抱えて眠りに就くことが多いと気付いたのは、ルーツ君に指摘されてからだ
監視員である肩書きから外れることはなく、ベクタープライムさんはあまり力はない
「戦いは好きではない」と言っていたベクタープライムさんの力を操るための道具が、何故剣の形をしているのか、それはルーツ君もよく知らないらしい
ベクタープライムさんと旅をしている道中、ホップや私は色んな言葉を学べられた
「言葉で回避出来る戦いもある」だから覚えていて損はない、とベクタープライムさんが言っていたから
私はどうやら物覚えが良かったらしく、何度か「ナマエは覚えが早いな。賢い子だ」と褒められた。その時は飛び上がってしまうほど嬉しくてホップに沢山自慢した
沢山の惑星に立ち寄った。動物型のトランスフォーマーが住む星や、宇宙の遥か辺境に浮かぶ星、
全ての星の旅が、私は大切で楽しかったのだ
≪ベクタープライム様…、あれは一体なんですか?≫
≪……グランドブラックホール……この宇宙に危機を齎す、恐れるべき脅威だ…≫
≪……黒くて…おっきくて……何だか、怖いです…≫
≪あまり見なくても良い。ナマエは私の後ろに隠れていなさい≫
≪は……はい≫
ベクタープライムさんのマントの後ろに隠れる。ホップはまだグランドブラックホールを見ているようだったが、バンパーとブリットも一緒になって隠れてきた。
それは、見ているだけで気分が悪くなるような、禍々しい色をしていた
≪……このままでは、宇宙が危ない≫
≪ど、どうするんですか…?≫
≪……頼みの光は、すでに在る≫
≪頼みの光…ですか?≫
≪ああそうだ… さぁ行こう。全員、私の中に入っているんだ。次元の入り口を開く≫
≪は、はい!≫
宇宙母艦に変形したベクタープライムさんの中に慌てて入り込む。
艦内が大きく揺れた。次元の入り口が開き、ベクタープライムさんがワープを始めた合図だ
今度は何処に行くのだろう
この宇宙の危機を救える存在なんて、本当に居るのだろうか
ベクタープライムさんが言った 光 って誰のことだろう
私達はただ、ベクタープライムさんの傍でじっと固まり、絶えず揺れるこの振動を目を瞑ってやり過ごしているだけだった