≪ナマエ、ちょっと訊いてもいいか?≫
「いいよ?」
町中を走り回り(少し脱線しつつ)地球探索していたのであろうエクシリオンが帰って来た
だけどその表情には少し困惑の色が窺える
声色もどこか真面目で、真剣だ。
少し背筋を伸ばしてみる。なんとなく
≪前に、ローリと2人で俺たちに地球の道路の走り方を教えてくれただろ?≫
「うん、教えたね」
≪そん時にさ、信号は『青は進め』『黄色は周りを見て状況判断をしろ』で、『赤は止まれ』って教えてくれただろ?≫
「…うん」
ローリの黄色の信号の説明がどこか投げ槍な感じで流されたことを思い出してナマエは苦笑する
教えた内容を復唱したエクシリオン。それの何か問題があったのかな
≪俺は、2人が教えてくれた事をちゃんと守ってたんだ。でも、前を走ってた車がいてさ、そいつが赤信号だーってのに気にせず走り抜けて行きやがったんだ!≫
「そ、それは…」
≪間違ってるぞ!って、注意してやりたかったけどさ、信号は赤だろ?だから俺は必然的に止まらなくちゃいけない、でもルールを守らない奴を追いかけて注意してやりたいのに、動くに動けない状態で困ってたんだ!≫
「…う、うん」
≪青になって、出せる限りのスピードで追いかけてみたけどもう姿が何処にも見当たらなくて!≫
「……うん」
≪ナマエ!俺はあの時、どうしてれば良かったんだ!?悪い奴は放っておかずに、追いかけて注意してやれば良かったのか?それとも、注意せずに信号を守ってた俺は、本当に正しいのか!?≫
「…あのね、エクシリオン。一先ず落ち着こう?ね」
≪あ、ああ…≫
握り拳を作って熱く状況を語ってくれていたエクシリオンを宥め、座るよう促す
まだ釈然としない、と言った様に不貞腐れながらもエクシリオンは座り込んで、
少し近付いたナマエの顔近くに己の顔を寄せ目線を合わせる
「…エクシリオン 人間にはね、色んな人たちがいるの」
≪…おう≫
「エクシリオンみたいに、ちゃんと信号標識を守る人もいれば、その人みたいに無視してしまう人もいるの。でもこの場合、どっちが正しいか、分かる?」
≪……オレ…?≫
「勿論! 信号…じゃなくて、車って言うのはね、とっても危険なの。道を歩いている人とぶつかって事故でも起こしたりしたら、その人は大怪我したり死んだりするの。それを防ぐ為に、人間はルールを作ったのよ」
≪うん≫
「エクシリオンは、人間を傷つけたい?」
≪!そんなわけない!≫
「だよね? だから、エクシリオンはこれからも地球のルールを守ってくれたらいいんだよ。皆が、地球でも上手くやっていけるようにする為には、このルールを第一に守ってかないと!」
≪分かった!ありがとな、ナマエ 何かスッキリしたぜ≫
「それは良かった」
≪でも、今度あの車を見つけた時は、ルールを守りつつ、注意してやらないとな!≫
「ちゃんとトランスフォーマーだって知られないようにするんだよ?」
≪ああ、任せとけ!≫
力一杯答えたエクシリオンに、頷き返す
地球の事をよく知ろうと頑張ってくれているエクシリオンや、他のトランスフォーマー達のことを考えて、心が穏やかな気持ちになった
≪…あ、でもこの間さ≫
「うん?」
≪シグナルランサーがまた停車中の人間に声掛けて驚かせてたぞ?≫
「……シグナルランサーにも、ちゃんと言っとかないとね」