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フランボワーズのかをり



チップスクエアを探していた時は、凄く楽しかった。

トランスフォーマーの皆はとても気さくで、人間の友人のように接することが出来た。私達はベクタープライムさんとマイクロン達に付いてチップスクエアの手がかりを探していたけど、ホップやバンパー、ブリット君とはとても仲良くなれたように思う

ベクタープライムさんのことは、物静かだな、いつも何か考えているな、難しそうな顔をしているな、と思った覚えがある。その頭の中では何が考え広がっているのか、それは私に推し量ることは出来ない










「……絶対、こんな所にあるはずないでしょ…」

「えー!ナマエだって、最初は乗り気だったじゃんかー」

「花畑に行くって聞いたからよ!大体、アトランティスは海の中の国でしょ!」



バドがコンピューターで調べて、アトランティスの手がかりがある場所を示したのは、人里遠く離れた山間の、見事な花畑だった
ずっと遠くまで生え渡っている色とりどりな花、花、花
足場もないような、あっても踏むのを躊躇われるほど、可憐な花が咲き誇っている
こんな場所があるなんてことは知らなかった。



確かにアトランティスの紋様は、あった。
でも此処は山の中だ。アトランティスとの関係性は薄そう。
ベクタープライムさんも「…よもやこのような場所に手がかりは…」って困り気味だったじゃない!




「でも、凄く綺麗な場所ね!」

「あれ、ローリも花とかに興味あるんだ?」

「うっさいわね、あっちゃ悪い?!」

「誰もそんなこと言ってないだろ!?」



口喧嘩を始めたコビーとローリはいつものことだったので気にしない。
アトランティスの紋様が浮かび上がっている場所は、花畑の丁度ど真ん中。赤、白、黄色、緑と色々な草花に囲まれた、緑溢れた場所
そこに埋もれている紋様は、荒れた荒野や海辺の近くにあったものよりも少し神々しく見えた


その紋様を調べていたベクタープライムさんが、そっと頭を振った



≪……どうやら、偽物のようだ≫

「えー!なーんだ…」

「………そっか」



違うとは思っていけど、少し残念
しょぼくれていると、ホップ達が声を掛けてきた



≪ですが、此処は今まで訪れたどんな場所よりも綺麗で素敵ですね!この地面にあるのはなんと言うものでしょうか?≫

「花のこと?」

≪花!花ですか!≫

≪…花、か……≫




ベクタープライムさんが、自分の足元に咲いている花を見下ろして小さく呟いた

すっかり花畑に夢中になってしまったマイクロン達と一緒に、ローリとバドは花飾りを作って見せていた。
手先の器用なコビーは綺麗な花冠を作って見せ、感動されている
私はどちらも作れなかったから、ぼうっと6人を見ているだけだったけど、
ベクタープライムさんが1人で何かを考えていたのでそちらに少し身体を寄せてみる。ほんの少しだけ



「…ベクタープライムさん、花が珍しいんですか?」

≪ああ… 他の惑星にも咲いているのを見たことがあるが、この地球の花が一番美しいように見える≫

「他の星にも花が咲いてるんですか!?」

≪ああ。このような花ではなく、もう少しシンプルな感じだが…≫

「へぇー…!」



聞かせてくれた話に単純に感動していると、ベクタープライムさんがコビーの方を指差した


≪コビーは、今何を作っているんだ?≫

「あれは花冠ですよ。花の茎と茎を絡ませて王冠を作るんです」

≪ナマエも、作れるのかい?≫

「わ、私はその…シロツメクサとかだったら何とかできるんですが…普通の花だと…」

≪そうか≫



そこで一旦会話が途切れた。手持ち無沙汰になってしまったので、何となく周りに咲いていた花を手折って花束を作ってみる
纏まりが出来たのでふと顔を上げると、ベクタープライムさんが私の方を見ていた。正確には、私の手元を



≪…それは?≫

「あ、これは唯の花束ですよ」

≪ハナタバ?花を束にして集めている物か?≫

「…まあ、言うなればそうですね。私は不器用なので、花束しか作れません」

≪…花束…≫

「もっと豪華だったりすると、プレゼントに贈ったりもします!愛情を伝えたりとか、お別れの時とか、感謝の意を込めたりとか…」

≪…………なるほど≫



そう呟いたベクタープライムさんは、一度私の手元の花束を見て、次に自分の周りに咲いている花を見る
そして、咲いていた一帯の花を親指と人差し指で摘まんで手折ってみせた



「…ベ、ベクタープライムさん?」

≪………これも花束、でいいのだろうか?≫

「い、いいと思いますよ」


ベクタープライムさんの指に摘ままれている花はざっと数えても今私が持っている花の数より多い。あの一瞬でそれだけ摘めるものなんだ、と場違いに感動する



≪……ナマエ、これを君に≫

「…え、わたしに!?」

≪私に新しい事を教えてくれた…… お礼だ≫

「あ、ありがとうございます!」



そっと差し出された花束を両手で受け取る。それでも手一杯になった
渡された花束に惚けていると、ベクタープライムさんは目線を落として恥ずかしそうに俯いた



≪…すまない 君の、受け売りなのに…≫

「何言ってるんですか!嬉しいですよ!すっごく!」

≪そ、そうか…≫




家に帰ったらすぐに調べよう。花を少しでも枯れさせないように出来る、その方法を