※ロドバ擬人化設定
転びました。
年甲斐もなくものの見事に顔面からすっ転びました。ええ、手元の資料に気を取られてたら何もない所で豪快に転倒しました
強かに鼻を強打しました。折れてませんか?でも何か、生暖かいものが口の端を伝ってきてます。ポタ、と床に落ちたそれは、血
「!」
周りに人はいません。が、こんなイイ年にもなって何もない所で転び、尚且つ鼻血を出して倒れてるなんて考えただけで羞恥で死にそう
転倒した際に散乱した資料を右手で掻き集め、左手で鼻孔を出来るだけ塞いでみたけれど、血は指の隙間から絶え間なく落ちていく
このままでは仕事着でもある白衣にも血液が付着してしまう、と慌てて立ち上がり何か拭えるものがないか、と手近の部屋に駆け込んだ。
そこは作業員達が使用する共同簡易キッチン
流し台といくつかの調味料と調理器具、業務用冷蔵庫が二つ
その内1つの冷蔵庫前で大きな体躯をした男がゴソゴソと動いているのが見えた
その後姿には見覚えがある。確か、キッカー君の相棒の…
「……ロードバスター…君?」
「うわっ!?」
後ろからかかった声に驚いたのだろう、目の前の男――ロードバスター君は冷蔵庫の中に顔を突っ込んだまま飛び上がり、肩を強かに打ってしまっている
「ぇ…っ、 ナマエさん!?」
「ご、ごめんなさい。急に呼びかけちゃっ…わっ」
「え、ぇ?ナマエさん、それ、血が…」
「あっえ、えっと…これは…」
本当のことを話すのがためらわれてしまい、(転倒して顔面強打などと)
逡巡していると、何を勘違いしたのかロードバスターは勢いよく詰め寄ってきた。
「も、もしかして何か重い病気か!?」
「!?違うちがう!」
手で鼻と口を覆っているから篭った声しか出せない。ロードバスターは聞こえているのかいないのか、握り締めている肩の力を更に強めた。
見上げなければいけないほど長身で逞しい身体の持ち主である彼に強く掴まれては痛くてたまらない。でも言い出せない雰囲気だ
「そ、その…鼻血が出ちゃって」
「鼻血!?」
「そ、そうです」
「な、なんでまた鼻血なんかが…いや、自分もよくグランドコンボイ司令官に稽古つけてもらってる時なんかはよく流したりするけど…」
「……さ、」
「さ?」
これは言わないといつまで経っても意外に心配性な彼はこの手を放してくれないだろう
「さっきそこで…転んじゃって…」
「………あぁ…」
なんですか、その気の抜けた相槌は
「道理でさっき外で物音した筈だ」
「…聞こえてたんですね…」
「い、いや、稽古が大変で腹が減ってつまみ食いしてたことがバレちゃうだろ? ――あっ、と言うかほら!これで血を抑えるんだ」
「あ、ありがとう…」
手渡されたのは少し厚手のキッチンペーパー
素直に受け取り、彼から少し目線を外しながら鼻元と伝っていた口元の血を拭う
次のペーパーを手にして待っていたロードバスターは、ふと降ろした視線の先のあるものに気がついたらしい
「膝小僧擦りむいてるじゃないか!」
「えっ? あ、本当だ…」
鼻血ばかりを気にしていて気がつかなかった。左右とも割りと派手に擦りむいており、そこからも微量ながら血が滲み出している
意識していなかったときは痛みなどなかったのに、意識してしまうと不思議なものでイキナリ小さな痛みが襲ってきた
「おいおいおい…!大丈夫なのか?」
「大丈夫だけど…一応医療室に行って診て貰ってきますね」
「…歩けるのか?」
「え…まぁ、歩くのに支障はないですけど…」
「………よし、ナマエさん。ちょっとじっとしておいてください」
「えっ」
グワン、と身体が浮遊感に襲われ、
背中とお尻に回った手、顔のすぐ横にはロードバスター君の精悍な顔
―――『抱っこ』されている
「え!?ちょ、ちょっとロードバスター君!」
「暴れないでくださいね。足痛んじゃうぞ」
「じゃ、じゃなくて、血が服についちゃうでしょ!」
「大丈夫です。本当は横に抱こうかと思いましたが、それじゃあナマエさんが恥ずかしいかと思って」
この体勢でも充分に恥ずかしいのだけれど…。体格差も相俟って、まるで父に抱き上げられた幼子のようではないか
いや…でも横抱きよりは、マシ、なのかもしれない…
「…じゃ、じゃあお願いします」
「あぁ任せろ。その代わり…」
「な、なんですか…?」
「俺がここでつまみ食いしてたこと、他の皆には秘密にしててください」
器用に私を抱えたまま片手で人差し指を立てたロードバスター君の顔は、
普段キッカー君の隣にいる彼が見せる表情とは、また少し違った表情をしていた