「やっぱり、総司令官から見たら、地球も小さな惑星の1つなの?」
≪いや、そうは思わない。地球も、とても素晴らしい星だ≫
「そっかぁ」
ギャラクシーコンボイの肩から投げ出していた足をぶらつかせながらナマエは至って平常のトーンでそう呟いた。自分の頭上に広がる無数の星々。宇宙へ行ったことのないナマエには、地球の大きさ等到底理解出来ない。
己の肩に乗っかったままのナマエに、ギャラクシーコンボイは顔を向けた
≪……しかし、ナマエ 君に『総司令官』と呼ばれるのは妙な気分になるな≫
「やっぱり変?皆が呼んでたから、私も呼んでみたかったんだけど…」
≪君を私の部下、支配下に置いたつもりはないから、落ち着かないと言えば落ち着かないな≫
「そう… 嫌ならやめるよ?」
≪嫌ではないが、君にはきちんと名前で呼んで欲しいと思う≫
「分かった、ギャラクシーコンボイ」
≪ああ≫
素直なナマエには笑みが零れる。
コビーやローリ、バドらと戯れているナマエは年相応の可愛らしい少女だが、自分の隣で座っているナマエは、どこか大人の女性を思わせるような言動をする。
初めて会った時、コビーやローリの学校に留学しているJAPANの留学生だ、と紹介してくれた時は、まだ幼さの残る顔をしていたのに。
他の3人もそうだが、子ども達は随分大きくなった。心身共に
≪…勉強の方は進んでいるのか?≫
「ちゃんと学校行ってるよ?コビーは相変わらず散々なテスト結果だけど、私この間のテストは満点だったの!」
≪やるな、ナマエ!≫
「…へへっ、ギャラクシーコンボイに褒められると、嬉しくなっちゃうね」
≪………≫
我々の戦いに、子ども達をつき合わせてしまっていると言う自覚はある。
申し訳ないと思い、子ども達をデストロンから護らなければならないとも思う
だが、私を含め、仲間達みんな、4人に助けられている事は事実
傍にいたい、いてもらいたい、そう思うのはお互い様なのは明白だ
≪……ナマエは、これから先、立派な女性になるだろう≫
「え…っ、 え、ぇ?な、急にどうしたの、ギャラクシーコンボイ?」
≪私はナマエより何年も何年も生きている。君たちの言葉で言うのなら、『人生の先輩』になるのだろうか?≫
「あー…そうね、そうなるよギャラクシーコンボイ だって、気が遠くなるような年月を生きてるんでしょ?」
≪あぁ。…もうすぐだ。もうすぐ、この戦いを終わらせるつもりだ≫
「…うん、そうだね。戦争なんて、終わらせなくちゃいけないよ」
≪普通の人間として生きてきたならば、絶対に体験しないような出来事を沢山経験しただろう?≫
「うん!それは胸を張って言えるわ!」
≪そうだな ――以前、地球のことを学ぶ為にワールドワイドウェブで調べモノをしていた時に見つけた言葉があるんだ。それを君に伝えたい≫
「なぁに?」
≪ Usus magister est optimus. ≫
声帯モジュールから搾り出されたギャラクシーコンボイの機械質な声がナマエの耳に響く
「……マ……ギス…… …オプティマス…?」
≪『経験は最上の教師である』と言う意味を持つそうだ≫
「…………」
≪ナマエ 君が、私達共に過ごした日々を忘れずに居てくれることを望む。たまにで構わない。『あぁ、あんな事も大変なことも、沢山の経験をしたな』と、思い返してくれるだけでいい。お願いだ≫
「……もちろん、だよ …ギャラクシーコンボイは、人間の記憶力を侮ってるわ。絶対に、ぜーったいに、忘れるわけないじゃない…」
≪そうか≫
硬い金属の肩に、次から次へと零れ落ちてくるナマエの涙は、とても温かい
Usus magister est optimus.
もう一度、そう口の中で呟いた