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増える犠牲


・アンケリク作品









私って彼に愛されてるのかしら


皿洗いを終えて蛇口の水を止めようとした時に思いついた疑問です。私って彼に愛されてるのかしら。彼とは恋人の事です。恋人と言い表すのに少し抵抗がありますからこの場合恋宇宙人、恋ロボ、恋パトカーとでも言うのでしょうか。今までの言葉でもしかしたら察せられるかもしれませんが私のコイビトは人間ではありません。後にも先にも彼は人間ではないですし人間になることもないでしょう。人間になる必要なんてどこにもなく、蛇口から流れ続ける出しっぱなしになっている水をぼんやり眺めている今ここで告白しますと私は彼が彼であるから好きになり、彼が人間でないことがマイナスポイントになることなんてありません。強いてあげるのなら彼の時折見せる横暴な性格がマイナスポイントになるのではないでしょうか。いえそんな事はどうでも良いのです。本題に戻りますと私って彼に本当に、本当に愛されているのでしょうか。出会った時からが既にアブノーマルな私たちでしたし、先に想いを告げてくれたのは向こうの方でしたから恐らく私は彼に愛されているのだと思います。少しだけ我に返れたので蛇口の水を止めます。ただ、先ほどチラッと述べました通り、彼は少しだけ横暴で口が荒い極悪な性格をしている時もあります。私より何倍も身体の大きい彼が私に向かって「お前を殺すことなんて簡単だ。コレ一本で済む」と言って鋼鉄で出来た指をチチッと振った時は恐怖さえも覚えました、それは昨日の話です。でも彼は平素はとても優しいのです。送り迎えもしてくれますし、私が暇になり手持ち無沙汰な頃合を見計らったかのようにドライブに連れて行ってくれます。でも私たちカップルは、少しだけ意思疎通が苦手でした。私はどちらかと言えば内向的な性格をしているし、彼は他人に自分の心や感情を読まれたり知られるのが嫌いでしたから。だから2人で居ても、何年一緒に居ても彼の考えていることはよく分かりません。ですからたまに私はこんな風にマイナス思考になってしまいます。私は本当に彼に愛されているのか、どうなのか、ねぇ、分からないよ、愛されてればいいなぁって思うけど、だってかれ、にんげんじゃないもん。ねえ、バリケード、わたし、本当にあなたに、あいされてるの?







≪愛サレテルゾ≫

「きゃぁあっ!?」

≪ウルセッ!≫



後ろからかかった声に驚き思わず持っていた皿を取り落としてしまい、私の叫び声と皿の割れる音が部屋中に響いてしまいました



「なな、なにっ!?って、え、フレンジー!?」

≪アーア皿モッタイネーノ≫

「ええぇっなななんでココに!?え、じゃあバリケードもいるの!?」

≪外ニイルゾ。オ前ノ悲鳴ニ驚イテ『何があった!!』ッテ通信送ッテ来タ≫

「えぇ、ちょ、ちょっと待って」



私がぼんやりしていたせいで不意の来訪者にここまで驚いてしまいましたし、
何よりリアルタイムで頭の中に居座っていた疑念の張本人がすぐ近くにいると聞かされて今とても頭がパニックです
と言いますか、フレンジー、あなた今なんて言った?



「私バリケードに本当に愛されてるの!?」

≪ダカラソウ言ッテルゾ≫

「ほんとに!?こ、根拠は?理由は!?」

≪アーモーメンドクセー!オ前普段ハ静カナノニ、アイツノコト絡ムト途端ニウルセー!≫

「だ、だってだって!」

≪本人ニ直接聞ケ≫

「えっ無理!!」

≪―ッテ、バリケードガ言ッテル≫

「な、バリケードに知られてるの!?」

≪筒抜ケダゾオ前の声≫

「きゃああああぁぁあぁあ!」



流しに積み重ねていた皿に肘がぶつかり、何枚もの皿をオジャンにしてしまったところで入って来たコイビト――バリケードの≪うるせぇ!!静かにしろよちゃんと好きだから!!≫と言う声でまた私はもう一枚皿を割ってしまった